組織の未来をつくるコラム

フジテレビ社長の記者会見から見える企業の危機管理

今回のタレント中居正弘氏のトラブルに対するフジテレビの対応について考えると、会社としての危機管理の本質が詰まっているように感じます。社長の記者会見は、公言として会社の立場を明確にし、社会に向けてメッセージを発信する重要な機会です。しかし、今回の場合、社長の話し方や内容にいくつかの問題点が見られました。リスクの重大さに比較して責任の認識が薄く、問題解決への実行性の低さが露呈しました。会社のスタンスを保つという為には、たとえタレント中居正弘氏に問題の発端があっても、自社の責任を明確に語ることが武器となります。不安を感じさせないよう、それに対する重大な反復措置を明示するべきでした。


会社の危機管理で最も重要なのは、日頃の準備です。リスクマネジメントは一朝一夜では成り立ちません。社内のコミュニケーション課題の規則化、公關されることを前提とした情報の伝達経路など、日頃の準備が不足ならば危機の後に急動しても無力です。今回の事件は、タレントマネジメントの位置にある個人の問題が大きく公關されることになるのは予想できたはずです。つまり、問題の定義や位置付けを含めた情報の伝達システムが置かれているか、日頃からリスクを見越すシナリオがあったかの点を評価する必要があります。危機発生後は、より一歩細かな説明を行い、ステークホルダーの対象を完全に想定して場合分けした対応が重要です。これは、会社の公信性の保つのみならず、内部の人材管理にも関わります。



近年、企業組織の中で生じた問題が、社会にも大きな影響を与えるという考え方が浸透し始めています。リスクの影響は企業内のみならず社会全体にまで及ぶ、と考える企業が増えたことにより、リスクマネジメントがますます注目を集めています。リスクマネジメントは、企業全体でリスクを管理し、損失の回避や軽減を図ることです。企業経営においては、思わぬリスクによって損失を受けることがあり、損失が大きすぎると企業の存続自体が危うくなる可能性もあります。企業がリスクマネジメントを実施する主な目的は、問題が起きた際の事業存続と、投資家に向けたアピールのふたつです。事業を行ううえで起こり得るリスクや、リスクが及ぼす影響について事前に把握できていれば正しい対策を講じることが可能です。


今後、組織として注意すべき点として、大企業の場合、タレント管理の負荷は突発的に増大することがあります。人材が内部のリスクを把握し、適切に報告できる能力を育てることが必要です。人材の情報マネジメントスキルの向上です。2点目が、機械的にリスク情報の発生を想定し、調整経路を確立しましょう。実際の場面では予想外の要素がありえるため、プランの中でも通用性を持たせることが大切です。社会は会社のステークホルダーの「真摯性」を要求します。結果のみを伝えるのではなく、過程や法値を共有する事で、公信は大きく諸えます。また、対応の過程の中でも「経営主体」のスタンスをきちんと表明し、なぜそのような判断をしたかを分かりやすく伝えるとより信頼を得られます。