U理論が課題解決・イノベーションを生み出す理由
現代社会はVUCA時代といわれ、これまで予想もしていないことが当たり前のように起こり、不確実な事態にも対応する力が求められています。そんな中で注目されているのがU理論です。U理論とは、複雑で解決が難しい問題に対して、意識の変容を促しこれまでになかったイノベーションを起こして解決する実行力や、その能力を引き出すプロセスのことです。そういった時代では、これまで正攻法として確立してきた価値提供や課題解決のやり方では不十分であり、技術の進展などを用いたイノベーションを起こすことが必要とされています。そういった背景から、U理論を用いてイノベーションを起こすプロセスを学ぼうとする人も増加傾向にあります。
これまでの体験から作られた思考回路や行動の特性のことをメンタルモデルと言います。私たちは気が付かないうちにメンタルモデルを作り上げ、そこから判断し行動しています。 メンタルモデルは過去の体験の積み重ねからの発想であり、イノベーションを起こすにはメンタルモデルから離れなければなりません。 U理論を活用することで、問題を深く理解し新しい視点を得て、これまでに作られたメンタルモデルの変更や拡充が可能になります。U理論では「未来からの学習」をするまでの過程を3つのプロセスに分け、7つの行動ステップとして紹介されています。最初のステップが、ダウンローディングで、どのような考え方にとらわれているかを再現し、客観的に見られるようにしていきます。
人は誰しも「本来の自己」と「役割の自己」の2つをもっています。「本来の自己」とは、夢、願い、価値観や感情などを抱いている、唯一無二のその人らしさのことです。一方「役割の自己」は、営業担当者や課長といった、職務上のミッションを遂行する役割を担った存在です。ダウンローディングの会話では、「役割の自己」が表面に出て本音の言えない形式上の会話になりがちです。「役割の自己」のメンタルモデルから離れて「本来の自己」での会話が次のステップであるシーイングの会話です。本音が言えないときというのは、「本来の自己」が危険にさらされるのではないかという感覚を抱いたときです。何を言っても大丈夫という心理的安全性を担保するのが大事で、人の意見に批判・反論をしないというミーティング・ルールを最初に決めておくのも大切です。
U理論を身につけるには、実際の課題に向き合うのが一番です。「本来の自己」からの過去の経験から紡ぎだされた喜びや痛みを、メンバー同士で共有していく。そして、「理解し合えた」という感覚を互いに得られると、今度は自分の立場に固執せず、相手の立場から現状を見られるようになります。このような第3のステップ「視座の転換」が生まれると「本来の自己」からも離れ「全体のなかの自己」の観ることができます。また課題に対して「メンタルモデル」から離れ「視座の転換」を経て「システムとしての課題」として捉えることができます。この先の第4のステッププレゼンシングの谷で「未来からのメッセージ」を受け、課題解決・イノベーションの道が開けます。ダイバーシティー&インクルージョンがキーワードです。