超高齢化社会を迎える2025年問題と介護離職防止のために企業対策
人口構造の変化により、さまざまな問題が発生すると懸念される「2025年問題」の年を迎えました。日本の人口は2010年を境に減少を続けており、2025年には約800万人いる全ての「団塊の世代」(1947~1949年生まれ)が後期高齢者(75歳以上)となることで、国民の5人に1人が後期高齢者という超高齢化社会を迎えます。その結果、大量の後期高齢者を支えるために、社会保障、主に医療・介護、年金などが限界に達し、社会全体に負の影響がもたらされると考えられています。すでに人手不足の状況にある介護の現場では、必要なサービスが受けられなくなることが危惧されています。厚労省が発表した2023年の介護職員数は介護保険がスタートした2000年に調査を開始して以来初めて減少に転じました。介護が必要な人が増える中で、仕事をしながら家族の介護を担う「ビジネスケアラー」の増加も避けられません。
今年4月からは「介護休暇」などの仕事と介護の両立支援制度について、企業が従業員に周知することが義務化され、企業側の対応も求められます。介護が必要な人は年々増え、ピークを迎えると予想されるのは2040年ごろです。総務省が2022年に発表した「令和4年 就業構造基本調査」によると、介護を行っている人の総数は629万人。そのうち、365万人が仕事と介護を両立しています。介護や看護を理由として過去1年間に仕事を辞めた人は10万6,000人にのぼり、この人数は2012年以降、約10万人前後で推移しています。介護の担い手は40~50代が多く、企業の中核を担う管理職やベテランの従業員が多いため、介護離職は企業にとっても大きな損失です。労働力不足の深刻化を防ぐためにも、企業を含めた社会全体による対応が求められています。
介護離職の防止に向けた支援制度として、介護休業制度、介護休暇制度、介護のための短時間勤務制度、介護のための時間外労働の制限(残業免除の制度)などがあります。これらの制度は「育児・介護休業法」で定められており、勤務先の業種や規模にかかわらず、対象家族を介護する従業員が利用可能です。就業規則に制度がない場合でも、従業員の申し出により利用できます。介護が必要な家族とは、負傷や病気、または身体・精神の障害により、2週間以上にわたって継続的な介護が必要な家族を指します。従業員が気兼ねなく制度を利用できる環境づくりに向けて、経営層による制度利用を奨励するメッセージ発信や上司の率先した制度利用など躊躇なく制度を利用できる組織風土の醸成が大事と考えています。介護支援の制度を知らないことも課題に一つですので、制度にまつわる研修やワークショップの開催などの重要です。
明るく飾らない人柄で、舞台やテレビのバラエティー番組で活躍する女優の柴田理恵さん。東京を拠点に仕事を続けながら、7年前から富山県に暮らす94歳の母の「遠距離介護」をしています。柴田さんは「遠距離介護の幸せなカタチ――要介護の母を持つ私が専門家とたどり着いたみんなが笑顔になる方法」(祥伝社)を出版しました。この本の出会いが私の介護の考え方を大きく変えました。この本で柴田さんは、一人で抱え込まないことです。情報交換が大事。情報交換すれば、「うちにも使えないかな」「どうやったらいいの」とお互いにより良い方向を選べると思います。と述べています。企業のすべきことは介護離職を防ぐための支援制度活用の啓蒙活動、対象家族が早い時期に専門家とつながる相談体制の拡充などが重要かと思います。その時が来たらではなく早い準備をお勧めします。