2024年の振り返りと2025年の展望
2024年は、中小企業を及ぶ多くのビジネスにとって大きな課題が提示された年でした。人手不足、最低賃金の増加、社会保険適用の拡大など、不確実な環境の中でも政策に応じた改善が求められてきました。今年も常に問題とされてきた人手不足は、中小企業の経営を大きく脅かす要因でした。日本の労働人口の減少に加え、大手企業への人手の集中は中小企業の人手不足問題をより大きくしています。来年は2025年問題を抱え、日本に約800万人いる団塊世代(1947~1949年生まれ)が75歳以上の後期高齢者となることで社会全体に様々な影響が生じることが懸念されています。社会保障費の負担増や医療・介護体制の維持が困難になる可能性や、人材不足の深刻化が懸念されています。人件賃金や労働環境の改善を通じた人材求人力の向上が重要となってきます。
2024年は最低賃金が過去最大の年間増加率を記録した年でした。これは労働者の生活支援に貢献した一方で、中小企業の財務に大きな負担をかけました。時給が55円引き上げられると、週30時間勤務のパート労働者の場合、会社の負担が月換算で平均6,000円以上も引き上げられることになります。場合によっては従業員数や雇用時間の見直しが必要となる可能性もあります。今後政府が目標とする「全国加重平均1,500円」までを考慮して人件費の負担を考えておく必要があるかも知れません。また、賃上げに以外に対応できる環境を整えることがこれまで以上に重要な課題となります。離職対策や他社との差別化を図り採用競争を有利にするためにも企業のブランド力を高め、福利厚生の充実や職場環境の改善、ワークライフバランスの実現などの取り組みが考えられます。
社会保険の適用拡大は、労働者にとって安定した環境を提供する一方で、企業にとっては新たな負担となりました。中小企業は、社会保険費用の増加を経営財務に反映させないように、従業員の将来年金マネジメントや賃金構造の重要性を再認識する必要があります。令和6年10月から短時間労働者の加入要件が拡大され、厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業等で働く短時間労働者は健康保険・厚生年金保険の加入対象となりました。今後、加入要件50人以下の企業にも加入要件が拡大される検討に入っていますが、国民民主党の減税策をめぐり「年収の壁」が注目されています。今後の動向を注視する必要があります。最低賃金の増額による就業調整等とも関連しますので、2025年は人材ポートフォリオの見直しの年になるかも知れません。
2025年は「未来人材ビジョン」で公表された「人材版伊藤リポート2.0」で示された経営戦略と人事戦略の紐づけと年になると思います。不確実な社会環境では、従業員の協力なしに業務の見直しや新たな業務構築など生産性向上・収益の確保は困難だと感じています。人手不足、キャリアの多様化など、企業と働く人を取り巻く社会環境は変化し続けています。今後、カーボンニュートラルやDX化が進めば、さらに産業構造や労働需要も変わっていきます。日本企業がこれまで重視してきたスキルや知見、特性が通用しない世の中になるだろうと予測されています。チームワークを構築し、最適化しながら目標達成を目指すミーテングの重要性と進歩性は今年さまざまな組織で実践してきました。新しいリーダーの育成と組織の変革は2025年の弊事務所と最重要課題と位置付けています。今年のコラムはこれが最後になりますが、来年もよろしくお願いします。最後までお読みいただきありがとうございました。