組織の未来をつくるコラム

感染症BCP作成のポイント

令和5年5月から、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが、5類感染症に変更され、日常における基本的な感染対策については、主体的な選択を尊重し個人や事業者の判断に委ねることが基本となり、国として一律に感染症対策を求めることはなくなりました。とは言え、事業の継続や従業員の命や健康を守る対策としての事業継続計画(BCP)の必要性が消えたものではありません。自然災害等のBCPとは違い感染症の場合のBCP対策では、「一時的に持ちこたえる力」ではなく「継続できる力」が求められます。そもそも新型インフルエンザ特措法は、鳥を中心に流行しているH5N1型病原性鳥インフルエンザが、人から人に効率よく伝播する強毒型のH5N1型新型インフルエンザに変異する危険性が高いとされ法制化されたものです。新型コロナウイルスの感染拡大の際には、企業の感染予防対策として活用されました。


H5N1型新型インフルエンザは人に感染した場合、致死率の高い感染症であり過去のデータに基づく死亡率(50%以上の高い致死率が報告)が確認できます。主に鳥類が感染していますが、感染した鳥に触ったり食したりした人にも感染する場合があります。近年、特定地域の哺乳類などの動物間で感染が拡大していますが、人への感染も起こり得ることで世界中が警戒しています。新型インフルエンザに変異した場合の感染経路は、感染者の咳やくしゃみによりウイルスが空気中に放出され、他者が吸い込むことで感染するリスクがあります。また、ウイルスが付着した物品や人に触れることで、目や口などの粘膜から感染が拡大する可能性があるとも言われています。社員個人が感染リスクとそれに伴う業務リスクを正しく理解することで、感染防止と安全な行動が可能となります。



BCPの制度構築には、パンデミック(感染症の爆発的拡大)前のリスクマネジメント計画とパンデミック時のクライシスマネジメント計画を作成する必要があります。クライシスマネジメント計画では、経営層、衛生管理者、総務部門などの主要メンバーを含めた迅速な意思決定体制を確立し、組織内に感染症対策チームを設置し、感染拡大時にはクライシスマネジメントを行う緊急対策チームとします。感染が確認された場合、速やかに在宅勤務への移行や業務一時停止措置を行い、必要に応じて職場閉鎖や消毒作業の実施、濃厚接触者の隔離対応を行います。感染者の増加による人員不足を見越した業務の分担やバックアップ体制、リモートワーク環境の強化と、業務フローのデジタル化(クラウドシステムやVPNの活用)の推進があります。何よりも大事なのは、定期的な情報共有(感染拡大状況、社内対応策、行動指針)を行い、社員が不安を抱かず業務に集中できるよう、明確で透明な情報発信を行うコミュニケーションの強化です。


パンデミック前のリスクマネジメント計画では、感染予防策の明確な規定と実施(例:社内消毒ルール、マスクや消毒液の配備)。感染リスクのある業務形態の見直し(リモートワーク、出張制限など)を行うなどの感染リスクの低減策を決めて必要があります。定期的な健康チェック(体温測定、健康アンケートなど)や社内外で感染が発生した場合の報告ルールの整備など早期発見体制の強化ルールを就業規則等で定めておく必要があります。保健当局や医療機関との連携、信頼性のある情報源からの情報収集や社内外での感染状況、政府や自治体の指示を迅速に伝える情報共有体制の構築。社内での密集環境の解消、業務フローの見直し、出社人数の削減、リモートワークの推進など職場環境の見直しも必要になります。パンデミック時の感染症リスクを正確に理解し、予防と対応を社員全体で徹底することが重要です。


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