「労働市場の未来推計2035」と企業の影響と対策について
先日、このホームページの「お知らせ」でお伝えしましたが、現在でも人手不足が深刻になっているこの状況が更に深刻化していくという調査結果が公表されました。「労働市場の未来推計2035」によると、日本は少子高齢化により労働力の供給が大幅に減少すると予測されています。2035年、日本では1日あたり1,775万時間の労働力不足が見込まれています。これは、働き手384万人分の1日の労働力不足に換算され、2023年よりも1.85倍深刻になる状況です。シニア・女性・外国人など多様な労働参加により就業者数は6,747万人(2023年)から7,122万人(2035年)に増加しますが、1人当たりの年間労働時間は1,850時間(同)から1,687時間(同)に減少し、労働力不足が深刻化すると指摘しています。この現象は、経済および社会にも重大な影響を及ぼします。
まず、経済成長の減速に影響します。労働力不足は生産性の低下につながり、経済成長を制約します。特に労働集約型産業で顕著であり、GDPの低成長や企業収益の圧迫が懸念されます。若年層の社会保障への負担が増加していくことになります。労働人口の減少に伴い、年金や医療などの社会保障費の負担が増加します。これにより、若年層の負担が重くなり、世代間の不均衡が進む可能性があります。また、地方経済の衰退が加速します。都市部への集中が加速し、地方の労働力はさらに不足します。地域経済の衰退が進むとともに、インフラ維持も難しくなり、人口減少が地方の存続を脅かします都道府県別では、特に東北エリアの労働力不足率が高くなる見込みが指摘されています。労働不足率の上位は秋田19.1% 山形16.4% 長崎16.2%となっていますが、将来、福島県も例外ではありません。
労働力不足の問題は、企業経営に深刻な影響を与えます。まず、採用や人材維持コストの上昇が考えられます。人材獲得競争が激化するため、企業は優秀な人材の採用や定着に大きなコストをかけざるを得ません。必要な人材が確保できない場合、組織の生産性が低下し、競争力が弱まります。特にITや専門技術を持つ人材の不足は深刻な影響を及ぼします。調査の進行モデル通りに推移すれば、組織の生産性低下は避けられません。新たな事業やサービスを展開する際、労働力不足が制約となり、イノベーションの遅れや、海外企業に対する競争力の低下につながるリスクがあります。新たなビジネスモデル、新規事業の制約を受けることは将来の企業経営にとって致命傷になりかねません。将来に向けて企業が対応すべき対策は、労働力不足に適応しつつ、持続的な成長を目指すため必要不可欠です。
テクノロジー活用による自動化は必要不可欠です。AIやロボティクスの導入によって作業の自動化を図り、人材不足の影響を軽減することが重要です。特に、ルーティンワークや単純作業の自動化は即効性がありますので、生成AIの活用など自社の業務に適応するシステム開発をお勧めします。女性や高齢者、外国人労働者の多様な人材活用により、労働力を確保することが求められます。特に育児や介護と両立しやすい働く時間を選択できる職場環境を整備することで、より多くの労働力を確保できます。リスキリング・アップスキリングの促進を進め、既存社員に対する教育やスキルの向上支援を行い、イノベーション対応力を高めることと同時に新しいタイプのリーダー育成で環境適応力を強化することで、企業の柔軟性を高めることができます。経営戦略と人材戦略の紐づけで、将来の更なる人手不足の対策に柔軟に適応できる組織風土を醸成できるものと確信しています。