ドラッカーとピーター・センゲに見る未来のリーダー像
人事システムを構築する上で私は、「マネジメント」の著者ドラッカーと「学習する組織」の著者センゲの両者の未来リーダー像を意識しています。二人のリーダー像について共通点や相違点、そして現代の社会経済状況においてどちらのリーダー像が有効かを考察していきたいと思います。ドラッカーは「成果を出すリーダーシップ」を強調しました。組織のミッションやビジョンに従って結果を出す能力が重要だと説きました。「目的に基づくリーダーシップ」「意思決定のリーダーシップ」「責任感と成果重視」の3つの柱の重要性を主張しています。センゲは「学習する組織」を提唱し、組織全体が継続的に学び続けることが成功の鍵だと説きました。センゲによれば、リーダーはメンバーに学習の場を提供し、組織全体で学習と成長を促進する役割を果たすべきだとしています。個人の成長と組織の成長は密接に結びついているという考えです。彼のリーダー像には次のような特徴があります。
「学習を促進するリーダーシップ」「ビジョンの共有」「システム思考」の3つの柱を重要視しています。リーダーは単に指示を出すのではなく、組織の一部分ではなく全体を俯瞰する視点を持ち組織のメンバーと共に未来を描き、共有されたビジョンを全員で実現することを目指します。また両者のリーダー論にはいくつかの共通点があります。両者とも、リーダーは明確なビジョンを持ち、そのビジョンを達成するために組織全体を導く役割を果たすべきだと考えています。組織の目的や成果に対して強い意識を持つリーダー像を描いています。ドラッカーはメンバーの才能を引き出すこと、センゲはメンバーの学習を促進することをリーダーの役割としています。どちらも、リーダーはメンバーの成長に積極的に関わるべきだとしています。「ビジョンと成果の重視」「人材育成への重視」が二人の共通点になります。次に、両者のリーダー像の違いを見ていきましょう。
ドラッカーのリーダー像は「成果」に強く焦点を当てており、リーダーは具体的な目標を設定し、その達成に向けて組織を導くことが求められます。意思決定力や責任感が特に重要視されます。成果志向のリーダー像です。一方、センゲのリーダー像は、個人と組織がともに成長することを重視します。リーダーは「指示」よりも「学習の促進」に重点を置き、システム全体を理解することを重視します。学習を促すリーダー像です。次に、両者のリーダー像のメリットとデメリットを整理しましょう。ドラッカーのリーダー像のメリットは明確な目標に向かって進むため、成果が出やすいこととリーダーの意思決定が組織のスピード感や効率性を高めることです。デメリットは、成果重視のあまり、組織内の学習や成長が軽視される可能性があります。一方、センゲのリーダー像のメリットはメンバーの自主性や創造性を高め、学習と成長を促すこと、システム全体を俯瞰して見るため、組織全体の調和や長期的な成長が期待できることです。
センゲのデメリットは、具体的な成果が見えにくく、短期的な目標達成に時間がかかる場合があることと、リーダーシップの役割が曖昧になることで組織の統制が弱まるリスクがあることです。しかし、今日の組織は、個々のメンバーが変化に適応し、学び続けることが求められています。イノベーションや組織の持続的な成長を考えると、センゲの「学習する組織」に基づくリーダーシップは、これらの要求に応える上で有効です。多様性のある組織では、全員がリーダーシップを発揮できる柔軟性も強みです。しかしながら、特定の成果を求められる場面では、ドラッカーのリーダー像が非常に役立ちます。特に、企業の短期的な目標達成や競争力強化を求められるシチュエーションでは、意思決定能力と成果重視のリーダーシップが効果を発揮します。皆さんが未来のリーダーとして、どちらの考え方も理解し、適切な場面で活用できるようになることを願っています。