組織の未来をつくるコラム

ミドル世代の転職と企業対策

少子高齢化が進む昨今、ミドル世代の市場価値が高まっており、これまでのスキルや経験を活かしてバリバリと働く中高年が増えています。株式会社リクルートでは、40代、50代のミドル世代の転職時の転職事例についてまとめた報告書を公表しました。賃金については四半期に一度発表している「転職時の賃金変動状況」を分析し、ミドル世代における「前職と比べ賃金が明確に(1割以上)増加した転職者数の割合」の経年変化をまとめています。転職者のうち前職と比べて賃金が1割以上増えた転職者の割合は27.4%と人手不足を背景とする賃金上昇圧力がミドル世代にも波及する結果となっています。転職者数も10年前の5倍となっています。近年の多様な働き方や、経験豊富な中高年だからこそできる管理職、専門性の高い職種を求める企業が増えたことなどミドル世代の求人のニーズが高まりつつある傾向にあるようです。


キャリアを巡る悩みや不安はあるものの、転職に踏み切れないミドル世代の方々もいらっしゃいます。特にミドル世代にとって転職における重要な判断軸になると思われるのが賃金のようです。ミドル世代は住宅ローンや子供の教育費など、出費が多い傾向にありますが、「転職の目的」について、「給与を高めるため」が最も当てはまると回答しています。また40代、50台とも「自分にやりたい仕事をするため」の理由も上位にあり、今後就職活動をする際に制約になると思うことの調査結果も紹介されていて1位が「年齢」で年齢が上がるほど高い傾向にあるようです。「経験」に関しては逆に年齢があがるほど制約を感じないようです。定年が65歳だと考えた場合、50歳で転職しても、その後15年間は働くことが可能なため、企業の一員として長く活躍することが出来るということも転職を考える理由と思われます。



ミドル世代が転職を考えるきっかけはさまざまのようです。特に新卒で入社した会社にずっと勤めてこられた方は、「社外の状況について知りたい」「自分の経験は他社では通用するのか」「転職で年収アップやポジションアップは可能なのか」「 ベンチャーへの転職も選択肢にあるが、ミドル世代の自分がついていけるのか」といった点にご関心があるようです。しかし、人手不足の時代に職場では管理監督職の立場にあるミドル世代を失うのは企業にとって大きな痛手になります。60 歳以降の働き方を意識するミドル世代が少しずつ増え、やりがいを維持、もしくは賃金を落とさず、長く働くためにはどうしたらいいか悩む方が多いようです。企業としては、今後のキャリアプランを再検討し、具体的な目標やキャリアパスを提示するなど「この会社での成長の可能性」を感じてもらうことが大事です。


他社での通用性で転職の準備を考える社員には、スキルアップや資格取得のサポートを提供することも効果的です。社外研修や資格取得費用の支援制度を導入することで、会社にいながら成長できる機会を与えることができます。転職による年収アップやポジションアップを希望している場合は、適切な報酬制度や評価制度を見直すことで応えられるかもしれません。個々の実績に応じたインセンティブや、定期的な査定による昇給の可能性を明示することも、社員のモチベーション向上に繋がります。「定年後のやりがい」は、定年後も活躍できるような職務設計や、柔軟な勤務形態を提案することが有効です。たとえば、パートタイムやプロジェクトベースの仕事、またはアドバイザー的な役割での活躍機会を示すことで、定年後も自分の経験が活かせると感じてもらうことができます。人事戦略と経営戦略の紐づけの意識が大事です。