男性の育児休業取得支援プラン
2023年度の民間企業の男性の育休取得率は初めて3割台にのぼり、前年と比べた上昇幅も12.97%アップの過去最高でした。事業所規模別には、大規模であるほど男性の育休取得率は高い傾向にありますが、事業所規模によらず全てで上昇しています。事業所規模が小さいほど育休取得者の代替要員の確保などに課題はあると思われますが、若年求職者の関心が高いこともあり男性の育休取得促進の波は中小・零細企業にも波及しているようです。政府は2025年に男性の育休取得率50%、2030年度に85%との目標を掲げ、来年度から育児休業給付の引き上げ(手取りが実質10割)や公表義務の対象拡大(従業員規模100名以上の企業)が予定されています。近年の育休取得率の向上には関係法令の改定が寄与することも大きいので事業所規模に関わらず取り組みは必要です。
厚生労働省の2023年調査では8割の職場で代替要員の補充ができていないようです。特に男性従業員の場合は属人化している仕事も多く、取得促進の重荷になっていることの理由が多いようです。まずは業務の属人化を解消し、他の従業員が問題なく業務を引き継げるようにすることが不可欠です。従業員が行っている業務をすべてリスト化し、ルーティーン業務と属人化している業務を明確に分ける必要があります。その上で、属人化している業務については、なぜ属人化しているのか(専門知識の必要性、経験によるものなど)を分析します。可能な限り業務を標準化し、属人化している業務についてもマニュアルを作成します。これにより、誰でも基本的な業務をこなせるようにします。育児休業の有無に限らず属人化した仕事の解消は日常的に必要です。
並行して業務引継ぎをスムーズに進めるために、段階的な引継ぎ計画を立てます。適切な引継ぎ担当者を早期に決定します。担当者が不足している場合は、業務負担の調整や外部リソースの活用も検討します。例えば、業務引継ぎ期間を3か月とした場合、各月を有効に活用できるよう、1か月単位で引継ぎ内容を段階的に進めます。1か月目は、業務の概要や重要なポイントを伝えます。2か月目は、実際に引継ぎ業務を引継ぎ担当者が行い、育休従業員がサポートします。3か月目は、担当者が完全に業務を担当し、従業員はフォロー役として詳細を指導します。休業中に予想外の事態が発生する可能性も考慮し、育休従業員がルーティーン以外の業務を洗出しリスト化、緊急時対応策を準備します。また、過去の問題解決事例を使い、想定されるトラブルへの対応方法を学び準備することも重要です。
厚生労働省では「中小企業のための育休復帰支援策定マニュアル」を作成・公表していますので、参考にしてください。その他、引継ぎ期間中は、定期的に進捗報告を行い、必要なサポートや修正を随時加えます。担当者以外のメンバーにも業務内容の共有を行い、フォロー体制を強化します。休業中もチームが円滑にコミュニケーションを取れるよう、事前に計画を立ててください。復帰のための計画などは「両立支援助成金・育休プラン」の様式を参考に育児休業後の復帰計画を事前に立て、スムーズな復帰ができるようにします。休業中も適度な頻度で従業員と連絡を取り、会社の状況や本人の状況を共有するのも良いでしょう。実際に引継ぎがどのように進行したかを評価し、今後のために改善点を洗い出し双方にフィードバックを提供、成長の機会にするなどのメリットも大きいです。是非、始めてみてください。