高齢者雇用と仕事での活躍促進の工夫について
政府は13日、「高齢社会対策大綱」を閣議決定しました。「就業・所得」の分野については、高齢期を見据えたリスキリングや企業等における高齢期の就業促進など、「年齢に関わりなく希望に応じて働くことができる環境整備」を図ることとし、働き方に中立的な年金制度の構築を目指し、「更なる被用者保険の適用拡大等」に向けた検討を着実に進めるとしています。高齢者の雇用機会は、全産業で人手不足や70歳までの就業機会の確保など法律の要請から拡大していますが、働き続けたい年齢は大きく変化していないとの民間の調査結果があります。しかし、高齢者個人の就労意識の変化、長い老後生活の金銭的負担や健康維持などを理由に働き続ける人が増加している実態も見えるようです。また、定年後再雇用では、給与が大幅に削減されるものの業務内容にはこれまでと変化がないといったケースも多く、不満を持つシニア就業者が少なくないことが指摘されていました。
パーソナル総合研究所の行った2023年の調査では「働くことを通じて幸せを感じ、不幸せを感じない状態」とは、「仕事にやりがい・意義を感じることができた」時とする理由が高齢になるほど高い傾向にあることが分かりました。「以前より難しい仕事を担当した」「上司から仕事の助言を得ることができた」「上司からのフィードバックを受けた」などの項目で、上司からの指導や同僚との切磋琢磨を挙げる声は高齢になるほど少ない傾向にありました。高齢者を部下に持つ「上司」は、「存在承認」や「平等な接し方」、「意見を取り入れる」、「仕事の進捗支援」、「組織目標の明確な伝達」を行っている傾向があるようです。高齢部下に対しては、尊重の姿勢だけでなく、業務の進捗支援や目標伝達などのトップダウンな支援も重要なことが分かりました。一方で、50代以下の部下と異なり、「成長機会の付与」や「公正な評価」、「賞賛・ねぎらい」は効果が見られなかったようです。
2022年の厚生労働省の調査結果では、高齢者就業者(60代)の18.2%が転職を経験し、他の年代の就業者と比較すると、30代の就業者に次いで多い水準だったようです。60歳以降の転職における「転職理由」の経年変化を見ると、「給料に不満がある」は2021年8.9%から2023年18.3%と9.4ポイント増加している一方で、「倒産/リストラ/契約期間の満了」は8.6ポイント減少しています。また、2021年に70歳就業法が施行されたことで、企業都合の退職(定年退職など)が減少しています。他方で、定年後再雇用時の給与額の低下など、給与面の不満を理由とした自発的な転職者が増加していると推察されます。高齢就業者(60代)の仕事選びの重視点は、「通勤の便」や「働く時間を選択できる」を重視する特徴が見られるようです。「通勤の便」は、自宅から近い職場を求めており、「働く時間を選択できる」は短時間就業の希望者が多いと考えられます。
今後、国の政策もあり高齢者雇用は企業にとって必要不可欠な経営戦略になります。調査では「自分の能力や個性を活かせる」「やりがいを感じられる」「自律的に自分の判断で仕事を進められる」など、過去のキャリアを活かして自律的に働くこともまた希望している傾向があるようです。求人募集の関しては、業務経験者であること通勤に時間が取られない距離、就業形態では職務・時間等の限定正社員制度の整備など就業規則上の変更の必要なります。多様な働き方を受け入れられる会社が条件になります。仕事のやりがいや意義を感じ、成長が実感できる業務分担や上司の対応といったソフト面のアップデートも必要になります。また、健康面での企業としての配慮も必要となりますが、若い世代との交流を通じて職場環境に良い影響を与えるメリットもあります。人事戦略と経営戦略の紐づけが叫ばれる現代、工夫しだいで高齢者が活躍する職場を提供することができます。