継続する最低賃金引上には組織の成長を見据えた対策を・・
2024年の都道府県最低賃金の引き上げ額は、全国加重平均1,054円で過去最高を記録しました。今回の予想以上の引上げは、地方から流出する労働者に歯止めをかけようとした道県の引上げトレンドが影響したようです。政府は2030年の半ばまでに最低賃金の全国平均を1,500円に引き上げること公言していますので、毎年50円以上の最低賃金の引上げの対策、近い将来にはすべての従業員の賃金表書き換えも視野にいれた対応が必要になります。今回の引き上げの影響か、退職金や賞与を廃止して、その原資を毎月支払われる賃金(基本給等)に配分しようとする動きも出始めています。いづれにしても10年後には初任給26万円の時代、生産性の向上・収益の確保のみならず、業務の変革・新規事業の参入など組織の成長を見据えての対策が必要かと思います。
企業を取り巻く環境変化の不確実性が高まる一方、その中で生産性の向上や業務の変革などの複雑な課題に対する解を一人の経営者が見出すのは不可能かと思います。経営者、従業員が個人の殻をやぶり、組織の枠を超えて、多くの人の多様な視点と専門性や能力を持ちより、組み合わせたりかけ合わせしながらイノベーションを生み出し、新たな価値を創り上げることが組織体制成長への解決に導きます。組織のパーパス・社会的使命を明らかにして10年後の組織のあるべき姿(ビジョン)示し、従業員が自身のキャリアの方向性が描けるように昇進やスキルアップの機会を提供することで長期的なイノベーションの維持、エンゲージメントの向上が期待できます。その上で、ともに新たな価値を創り出すプロセスを共有しながらボトムアップの組織の成長を目指すのが最適な方法と考えています。
新たな価値の創出は挑戦ともいえる取り組みで、既存の価値体系との軋轢がつきものです。初期は常に困難と抵抗を伴い、関係者が広がるほどに見解や利害が衝突して新たな課題を生み出し議論が平行線のまま進むこともやむを得ない出来事です。それを突破していくのが組織のパーパスでありミッションであり、その先のビジョンです。そのために集まったメンバーだからこそ個人の立場を超えた対話を可能として、イノベーションを生み出し新たな価値を創り上げます。同時にそのプロセスをデザインすることでメンバーを「価値共創リーダー」として育てることができます。AIの進歩によって既存の業務、既存の価値が失われつつある時代、生産性の向上・収益の確保のためには今までと違うビジネスモデルが必要です。組織も変革し成長を求められる時代です。
成長する組織は、対話型組織開発が実践できる企業です。従業員が自由に意見を述べ、失敗を恐れず挑戦できる職場の環境、多様なバックグラウンドを持つ従業員が互いに尊重し合える環境です。報酬と従業員の報酬が連動した仕組みなどの人事システムも整っていることも条件です。従業員の課題となることは、組織のパーパス・ビジョンに従って自分のやるべきことの目標を定めて実践した経験の有無。様々な組織課題があるとしても3年あれば対話型組織開発に向けたミーティング・実践が可能になります。制度・施策の構築にあたっては、複数の事案を同時進行で進めなければならないかも知れません。最低賃金1500円の未来は既に起こった事実です。どのようなメッセージを受け、どのように組織を変えるのかがイノベーション、時間はあまりありません。