組織の未来をつくるコラム

男性従業員のための育休復帰支援プラン

7月31日、厚生労働省は令和5年度、男性従業員の育児休業取得者率を公表しました。配偶者が出産して育児休業を10月1日までに開始した男性従業員の割合は30.1%、前年を約13ポイント上回る過去最高を記録しました。また、同省は同日、18歳から25歳の若年層男女を対象とした「若年層における育児休業取得等に関する意識調査」(速報値)を発表しています。これによりますと。仕事とプライベートの両立を意識、仕事と育児も熱心に取り組みたい男女はほぼ同率の約8割になりました。就職活動の選定企業として男女69.8%が育休取得実績を重視、さらに男性は育休取得実績のない企業には61.0%が就職したくないと回答しています。女性従業員の育休取得率は令和5年度84.1%と多くの企業で育休実績がありますが、男性従業員に関してもその準備が必要な時代です。


厚生労働省では、令和3年度に「中小企業のための育休復帰支援プラン策定マニュアル」を公表しています。令和4年の法改正施行に対応した内容ですが、来年度の育児介護休業法改正も視野にいれて準備されれば良い制度として機能します。ステップ1として育休支援のために企業が準備すべき事項として雇用環境の整備、研修等による制度の周知、対象者や利用できる制度の確認として規程のチェックなどが挙げられます。ステップ2として対象者に関しての個別の周知、意向確認、休業中の代替要員への仕事の引継ぎ等の検討もこの段階。ステップ3が職場マネジメントとしての個別の「育児休業職場復帰プラン」の作成の準備・実施になります。両立支援助成金の申請に関する様式に重複する部分がありますので、併せて確認されれば良いかと思います。助成金の支給対象になるには企業の両立支援の取り組みが必要ですので併せて検討ください。



男性の育児休業の取得に関しては、出産の当事者である女性の育児休業は当然の権利と周囲の理解が得られますが、男性は長期間の休業取得には抵抗感があるようです。男性が育児休業を取りにくい企業の風土が色濃く残っている企業も少なくありません。育休の対象者であっても過去に事例がなく申請しにくいというのも実情です。また、業務が繁忙で職場の人手が不足しているなどの事情があれば育休を取りにくい心理が働きます。仕事自体が自分しか出来ない仕事いわゆる属人化しているなどアナログなワークフローで動かしている企業ではなおさら申し出がしにくいかもしれません。育休を取得することによって将来のキャリア形成に悪影響がありそうだと思ったら申し出もしにくいと思います。実際、育休を取得することによって昇給・昇格に影響が出た話も良く聞きます。人手不足の時代に若年者の採用を希望するのであれば男性が普通に育休を取得できる体制を作ることが必要です。


育児休業職場復帰支援プランは、対象者が出る前から社内で検討することが大事なことと思っています。理由は職場環境の改善を従業員同士で話し合いながら作っていくことで、他人事ではなく自分事として取り組むことができます。育休当事者が何を悩み、何を欲するのかを考えることが自分を離れて組織の問題として全体を体系的に見ようとする心理に変わっていきます。一番の問題である仕事の引継ぎも、ひとりの戦力が減ることで、今まで通りの仕事の進め方が出来ないことが分かります。必ずと言っていいほど、業務、プロセスの見直しの議論に繋がります。対話を通じて現場から組織を変えようとする企業が増えていますが、今後、必ず対策を講じざるを得ないであろう男性の育休問題を従業員の声で造られてはいかがでしょうか。