組織の未来をつくるコラム

組織の関係性再構築に向けた取り組み

先日、大手新聞社が主催するスタートアップ・セミナーを受講し、トークセッションに登壇された経営者方々のお話を聞いて感銘を受けました。ソーシャルビジネスとして地元食材を使い安心できる離乳食の商品化を実現した起業家や8000件の農家と消費者が直接取引出来るシステムを構築して過疎地域の関係人口を増やす取り組みをしている企業などスタートから現在までその情熱を持続できることは素晴らしいです。DX分野で登壇された地元企業のお二人の次世代経営者からも地元愛に溢れた素晴らしい話が聞けました。お話を聞いていて浮かんだワードが「関係性」でした。今回のテーマは、新たなビジネスに取り組まれた経営者の話ですので、当然収益につながる事業展開について、あるいは顧客創出の取り組みなどを期待すると思いますが、便益だけにとどまらない顧客あるいはステークホルダーとの関係についての話を多く聞けました。


企業における関係性の強化といえば信頼度合を強めることやブランド力など企業ビジネスのイメージが強いですが、自分の出来ることで地域の成長に貢献できることを続け、多くの人に知ってもらい心理的安全性を届ける関係性のようです。それぞれ企業の方向性は違いますが、企業活動そのものが社会的課題や個人の困りごとを解決することですので、スタートアップやソーシャルビジネスと言わずとも企業の本質を指していると思います。起業の大事なポイントとして「自分は何をしたいのか?」から始め、信頼関係を育み自分の仕事の理解を拡げて、地元・あるいは課題を抱えている人に解決の道筋を示すことが社会に対する責任と考えていると理解しました。モデレーターから成功の要因を聞かれていましたが、当たり前の仕事を当たり前に行い、長く続けること・・これは普通に誰でも行っていることでは?・・と答えられていたのが印象的でした。



近年、「管理職の強化・候補者の選抜」「新人・若手社員の早期戦力化」など企業は様々な難しい問題を抱えており、今、組織開発が注目を集めています。組織開発とは、はっきりした定義はありませんが組織に内在するエネルギーや主体性を引き出す機能で、人と人の「関係性」の変化や「相互作用」で、組織を変化させていくという考え方ともいえます。今までは、外部コンサルタントなどが組織の調査により課題を洗い出して解決策を見出す活動(診断型組織開発)でしたが、今は自分たちのポジティブコアを明らかにして未来における組織の姿を探求し実現のための対話を重ねて互いの能力を高め合う活動(対話型組織開発)が主流になりつつあります。近年の組織課題として管理職になりたくない社員が増えていることです。理由は管理職の仕事が長時間に及ぶこと責任が重いこと、家庭を大事にしたいなど様々です。しかし、企業・組織の活動は方針・目的を共有して相互の関わり合いや協働の力での社会的使命実現のための活動です。


働き方改革の推進とともに、メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用への転換が言われてきましたが、日本では欧米のような仕組みが直ぐには無理であることに多くのコンサルタントが気づいています。メンバーシップは組織が掲げる社会的使命を支持する(フォロワーシップ)と組織やチームをあるべき方向にいざない成果をあげる(リーダーシップ)の二つの機能からなります。個人の能力主義ジョブ型の人事システムの構築を目指しても、組織は従前のメンバーシップ型の制度を継承する道を探すようになります。方針・目的の共有、対話と知の結合、チームワークと共同思考など新しい関係性への再構築を目指す。今回、セミナーを受講してミッション・ビジョン・バリューが同じ方向を向いていることと人と人の関係性がいかに強いかを学ぶことが出来ました。ますます、対話型組織開発を推進していく決意をしました。


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