組織の未来をつくるコラム

精神障がい者支援、生活・就労支援の取り組みについて

これまでの福祉サービスでは、できないことを解消することを優先させ利用者本人の能力や資源が生かされていない現実がありました。顧問先の業務改善活動の中で、本人の能力や支援者の支援、地域に存在する社会的資源を活用して、本人の強み、要望に沿った支援ができないかという課題にぶつかりました。福祉職員キャリアパス研修で学んだストレングスモデルへの移行と支援プログラム作成、業務見直しへの試験的なプロジェクト結成が昨年末の出来事です。それから毎月1回、私がファシリ役のミーティングを重ね、グループスーパービジョンへの道筋が見えてきましたが、知れば知るほどその困難さが明らかになり福祉職員さんたちも途方に暮れることも多々あったようです。それでも挑戦していることは、障害福祉の目指すところであることは理解しています。


障がい者の方の多くは、施設やグループホームなど特定の人間関係の中・可能性が閉ざされた生活の場で過ごしていますので、自分の希望や夢について話すことは少なかったようです。今回、プロジェクトを進めるにあたって多くの職員さんが知る利用者の方をモデルとして、個人特性、才能、環境、興味など職員さんが知る個人の「強み」を整理しました、その上で担当職員さんが個人と環境の6領域について本人にヒアリングを行い、集約したストレングスアセスメント票の記述にプロジェクト・メンバーが驚きました。本人が今まで話をしなかっただけで多くの希望や夢を持っていました。個人資源と環境資源のついてのエコマップを作成しましたが、限られた人間関係、限られた社会的資源での生活であることが明らかになり、地域社会への参入が課題と認識しました。



ストレングスモデルでは、「生活がうまくいっている人には目標と夢がある」と言われています。しかし、専門家の援助がしばしば、目標の設定や達成を一層抑圧する可能性を指摘しています。精神障がい者にとって発病後の人生は苦悩と失意、自分たちは何もできないというメッセージに支配されています。障がい者に問題を見つけた時に、本人が克服するための何らかの処置を見つけること。何よりも本人が解決した達成感を満たすことが大事です。熱望×能力×自信=個人のストレングス、である数式を忘れてはいけないようです。そのための援助、ノーマライゼーション、自然発生的な包摂の過程、可能性の開かれた生活の場をどのような形で創出できるかが今のプロジェクト・メンバーの課題です。回復・復旧ためのプラン、社会的資源の創出とケアプラン、本人の機能改善の両面からの支援が重要です。


そもそも、当初このプロジェクトは組織開発の実践として育児休業者の職場復帰支援と業務改善が目的、副題として新しいタイプのリーダー創出がスタートでした。ストレングスモデルは、障がい者が尊厳をもって自立した生活を送ることが出来る社会の実現、障害福祉のいわば理念です。自然にそちらに流れたこと自体は望ましいことですし、イノベーションの種になるかもしれない取り組みです。グループスーパービジョンを進めるファシリテータが重要なポジションですが、今のグループメンバーがその役割を果たすリーダーとなってくれることを期待しています。研修ではなく実践としての取り組みなので、ひとり一人の職業人として管理職としての成長が素晴らしいです。先日、法人側からもこの話がでてコンサルタントとしてのやりがいも感じています。