組織の未来をつくるコラム

組織開発のすすめ方

組織や組織間の問題にアプローチし、組織をよりよくしていく取り組みである企業の組織開発が、近年、注目されています。就業形態や働く価値観が多様化した現代において、組織内の人や部署間のつながりや関係性が希薄になる傾向があります。組織開発は組織内の人と人の関係性や部署間の関係性へ働きかけ、組織を活性化し、組織全体のパフォーマンスを上げていく取り組みです。組織が抱えている問題を明らかにし、解決策を考え実行します。よく人材開発との違いを指摘されますが企業の課題によっては、必要とされるアプローチが異なり併用も可能かと思います。一昨年、経産省から公表されました「未来人材ビジョン」で示された問題発見力や革新性などこれから必要とされる職業上の能力習得にも有効です。組織開発の取り組みに向けた動き自体が組織開発だと思います。


組織開発では一般的に、業務フローの改善や意識改革、組織内でのコミュニケーション改善、チーム内の関係性強化、組織構造の最適化といったアプローチをおこないます。中小企業で行う組織開発では少人数のチーム編成を行い、目指す組織の姿を明確にして、客観的事実に基づいて現状を正確に把握することから始めます。目指すべき姿と現状のギャップを課題として設定して、達成するために必要となるスキルや働きかけを対話と討議で行動計画として落とし込みます。計測可能な指標を設定して1か月などの期間を定めて実行していきます。効果を検証して修正を必要とするのか有効な実証が得られない場合一定期間を定めて延長するのも一案です。フィードバック分析のPDCAサイクルと同様です。ギャップ分析ができる社員は前述の「未来人材ビジョン」に経営戦略と人材戦略の紐づけに繋がります。



失敗を常として検証と実践を繰り返すことで有効なデータを集めることが重要です。スモールアクションで進めた行動計画と実践を、全社展開とするのには根拠となる先行事例を得る必要があります。チームでの実践・検証・新たな課題に向けた対話と討議、解決策の仮説と実践の繰り返しから「問題発見力」「的確な予測」「革新性」などの個人としてのスキルが回を追うごとに磨かれてきます。組織を活性化させパフォーマンスを向上させる全社的な取り組みは、このようなチームアプローチから得られるものです。期待通りの成果を得られたら再現性を得るための要因を明らかにして実行マニュアルなど作成し説明会の実施などを行います。その後の目指す組織姿への定期的な振り返りも大事です。ここまでくればコミュニケーション力に優れた有能な管理職です。


組織開発はコンサルタントなどの専門家が、インタビューやアンケートによって得られたデータをもとに効果的な施策や行動計画を立てる時代は終わったと思います。従業員がチームを作り対話を通して、自分たちの組織のありたい姿を明確にして、主体的な取り組みから理想の関係性を創り出していく時代です。コンサルタントは「場を創り出す」ファシリテーターとして参加するのが理想だと確信しています。組織開発の対話と討議、実行計画と行動、検証で人が育つことを今も見続けています。他人ごとではなく、あるべき「自分の会社は自分が創る」気概のある人が大勢いる会社は、間違いなく素晴らしい会社です。