組織の未来をつくるコラム

カスタマーハラスメント・企業が取るべき対策

近年、カスタマーハラスメント(カスハラ)が話題になることが増えてきました。カスタマーハラスメントとは、顧客や取引先などからのクレーム全てを指すものではありません。顧客等からのクレームには、商品やサービス等への改善を求める正当なクレームがある一方で、過剰な要求を行ったり、商品やサービスに不当な言いがかりをつける悪質なクレームもあります。カスタマーハラスメントは、従業員に大きなストレスを与え、従業員の離職の原因になります。また、不当な要求を続けるクレーマーへの対応に時間と労力を割くことは事業にとっても大きなマイナスです。さらに、カスタマーハラスメントの放置は企業の安全配慮義務違反にもつながりかねません。


企業がカスタマーハラスメント対策の基本的な枠組みを構築するため、カスタマーハラスメントを想定した事前の準備、実際に起こった際の対応として、組織のトップが、カスタマーハラスメント対策への取組の基本方針・基本姿勢を明確に示すこと。カスタマーハラスメントから、組織として従業員を守るという基本方針・基本姿勢、従業員の対応の在り方を従業員に周知・啓発し、教育することも重要です。またカスタマーハラスメントを受けた従業員が相談できるよう相談対応者を決めておく、または相談窓口を設置し、従業員に広く周知することも事前準備として重要です。実際に起こった場合にスタマーハラスメントに該当するか否かを判断するため、顧客、従業員等からの情報を基に、その行為が事実であるかを確かな証拠・証言に基づいて確認すること。



気をつけなければいけないのは、カスタマーハラスメントの判断基準は、業種や業態、企業文化の違いから企業ごとのに違いが出てきます。おのおのの企業であらかじめカスタマーハラスメントの判断基準を明確にした上で、企業の考え方や対応方針を統一して現場と共有しておくことが重要です。事前に定めた対応方法・手順に従い被害を受けた従業員に対する配慮の措置を適正に行うことや一人で対応させずに複数名あるいは組織で対応することも大事です。同様の問題が発生することの取り組みとして見直し、改善を行いハラスメントがなくなるまで継続することです。自社のカスタマーハラスメントを社内だけではなく、顧客等の社外に向けた周知・啓発活動の有効な手段だと思います。


最近、JR西日本は従業員の人権が守られ、心身ともに健康で安心して働ける環境を整えることが大切であるという考えのもと、「JR西日本グループ カスタマーハラスメントに対する基本方針」を制定しました。この中で、カスタマーハラスメントの具体例を明示した上で、そのような言動が認められた場合は、従業員を守るべく毅然とした対応を行い、必要により商品・サービスの提供や顧客対応を中止することを宣言しています。厚労省の令和2年度各ハラスメント調査でも、パワハラ、セクハラに次ぐ件数割合で高く、近年は報道されるように増加傾向にあるようです。今後、このような方針の整備が多くの会社で進められると思われますので、JR西日本の基本方針は参考事例としてチェックしておきたいところです。