ジョブ型人事の進行と考課者教育
一般的に人事管理の取り扱う要素は、人、仕事、賃金の3つと言われています。また。人事管理の狙いは働く人の能力を高め仕事の質を高め賃金を高める高位均衡を図ることです。高位均衡の基準は、人が主人公となる人間基準と仕事を基準とする考え方ですが、働き方改革の時代背景から考えれば仕事基準をメインに考える必要があるようです。職能資格制度に代表される人間基準である能力主義は人材育成という観点において極めて有効であり、育った人材が仕事を高めていく制度で日本モデルの神髄と言われてきました。しかし、日本の能力主義は少子・高齢化や生成AIなどデジタル化の進展による産業構造変革の中で、人と仕事賃金の高位均衡が保てなくなってきており成果主義のジョブ型人事への切り替えはやむを得ない現実になってきています。
ジョブ型人事の普及に伴い、人材育成の観点から現場力強化の人事管理、労務管理が望まれます。人事管理は経営陣において企業の従業員の期待像として戦略、政策を組織的に行う業務であり、労務管理はそれぞれの現場で管理者が行う人材管理でそれぞれ区別した言葉として使用しています。現場では経営陣から指示された人事戦略や政策に基づいて人事管理を実践します。人材育成は、わが社の人材はこのような能力を身につけてもらいたいという企業人としての期待像であり、もう一つは、あなたには今期このような仕事を遂行してもらいたい言う個人目標です。前者はキャリアパス等級制度の等級基準という形で示され後者は人事考課手法である目標管理制度において実践されます。
ジョブ型人事に切り替えていくためには、従来の信条、温情主義は捨てていかなければなりません。頑張っているが成果がでない場合の評価は、どのような理由があろうとも厳正に問題ありと判定することが納得性のある評価になります。しかし、本人の努力も適正も関係ないとなると今後問題となると思われるのは、成績不振者の取り扱いです。そこでジョブ型人事の進行に伴い役割の違いに応じた業務内容や成果責任の開示も必要となり人材教育・人材育成は現場の管理監督者の重要な業務となります。上司と部下による業務分担の話し合いと職務基準の明確化や育成計画についての対話が重要です。人事考課は、人を育てる上で重要なしくみですがその管理者の選抜は容易ではありません。向き不向きもありますが、対話を理解する新しいタイプのリーダーが行うのが理想的だと思います。
目標管理制度は、組織目標に沿った個人としての目標設定を行います。情意・業績・能力の各要素において部下・上司間の対話と討議によって適切な目標設定を行います。ここで必要なのはコーチングスキルと評価基準に関する統一的な基礎知識の理解です。2回ほど実施する中間面接においてもコーチングスキルは必要ですが、最も大事なことはPDCAのフィードバック分析における上司としてのアドバイスです。社員は人事考課を通して自分の努力や取り組みが評価され、企業の活動や業績とのつながりを実感することによって、業務へのモチベーションを上げることができます。評価エラーを防ぐ評価を統一する意味でも、これから重要な取り組みになる人事考課者に対する教育は重要です。