組織の未来をつくるコラム

プロフェッショナルの条件

ドラッカーの「プロフェッショナルの条件」を読み直してみました。AIの進化を背景に、既存の職業の多くが淘汰されると見込まれています。社会保険労務士の手続き業務なども例外ではなく、現実的に労務のプロフェッショナルを必要としない時代に向かっているようです。この本の中でドラッカーは、従来の資本の概念である「ヒト・モノ・カネ」から「知識」が重要な位置をしめる知識社会の到来を予想していました。知識社会で求められるのは経験や理論などを使って「いかに成果」を生み出すかを考える力です。情報・経験・理論のすべてがそろってこそ本当に知識であると書かれています。知識をもって自分の立てた目標を達成することが、これからのプロフェッショナルの条件と言えそうです。


プロフェッショナルになるためには、普段から習慣化する5つの能力があります。一つは「貢献を考える」ですが、非常に大事な概念で自己の存在意義と行動を考えることです。次に「強みをいかす」は、ドラッカー理論の能力開発の基本であり多様な強みをもってイノベーションが可能になるという考え方です。3つ目は「時間をコントロールする」です。いま自分はどのように時間を使っているかを考え無駄な時間を整理し有意義の時間にまとめることです。「一番重要なことに集中する」が4つ目です。劣後順位を決め成果を上げることに集中し古くなった仕事を捨てることです。最後が「正しく意思決定を実行する」。問題を分類して5つのステップで実行することです。これらが理解できれば人生を充実させることが出来ると思います。



AIに発達のより知識社会で求められる情報は間単に手に入れられるようになりました。プロフェッショナルとなる条件として、経験・理論がより重要な要素となります。AIと聞くと、万能なイメージを持つテクノロジーを連想することが多いですが、AIにも出来ることと出来ないことがあります。そこを整理しないとプロフェッショナルを目指すにしても無駄なエネルギーを使ってしまうかもしれません。AIの登場により様々な分野で識別の能力が飛躍的に向上しています。「定められたルールに従って動くこと」「データ分析・予測」「画像・音声の解析」などAIが得意としている作業です。逆にAIの限界が見えた分野も分かってきています。「翻訳分野」「倫理分野」「イレギュラーな社会の変化」「ディープラーニングの計算コスト」などです。


いわゆるVUCAの現代社会において、変化する状況にAIは対応できないようです。また、プライバシーの尊重や倫理観などの考えは持ち合わせていないようです。通常わたしたち人間が行っているような人間的感情・経験による判断も難しいようです。第4次産業改革といわれる現代社会では、労働集約型の低スキルと言われる分野と研究・開発などの高スキルの分野に労働者が集約されると予測されています。仕事自体が消滅するかもしれないといわれているのが、事務職や社会保険労務士を含む士業などの中スキル分野です。いあらゆる業種で「プロフェッショナルの条件」を、再構築する必要があると考えています。その上で「成果」はどのように変わり、目指すべき方向性は何か?習得すべき能力は何か?何よりも自分は何者なのか?を考える時代ではないかと感じています。