企業の経営課題のトップは現在・3年後・5年後共に「人材の強化」
時代によって企業の経営課題は変化しますが、現在は人材の強化が企業にとってもっとも重要な経営課題になっているようです。日本能率協会が公表した「日本企業の経営課題2023」の調査結果から、経営者が考える現在、3年後、5年後の経営課題について明らかになりました。なお、本調査の対象は同協会の法人会員ならびにサンプル抽出した全国主要企業の経営者(計5,004社)に対して回答数は528社となっています。これによれば、「現在」における経営課題の上位は①48.9%(41.1%) 人材の強化(採用・育成・多様化への対応) ②44.9%(43.4%) 収益性向上 ③32.0%(35.1%) 売上・シェア拡大となりました。(()内の数字は前年の結果)このように、人材の強化(採用・育成・多様化への対応)が1位となっていますが、これは3年後の課題でも1位(46.4%)、5年後の課題でも1位(15.3%)となっていて直近の課題であるだけではなく、長きにわたる課題になると捉えられていることが分かりました。
「3年後」の課題については、第1位が「人材の強化」(46.4%)、第2位が「収益性向上」(30.1%)、第3位が「事業基盤の強化・再編、事業ポートフォリオの再構築」(28.0%)となりました。「人材の強化」は第2位と比べ15ポイント以上高く、圧倒的に多くの企業が課題と捉えていることが分かります。また、過去3年間の推移を見ると、1年ごとに約5ポイントずつ増加しており重要性が急激に高まっていることも見てとれます。近年、労働力人口の減少などの要因によって人材確保が極めて難しくなっていることから、企業の経営課題のトップに人材の強化が挙げられていると考えられます。その改善のため、「働きがい・従業員満足度・エンゲージメントの向上」も年々、注目を集める結果となっています。3年後の職場環境の改善に向けた各企業の動きは、今年度は活発になると思われます。反対に、「デジタル技術の活用・戦略的投資」は、一昨年・昨年に続けて割合が減少し、順位を下げています。
人材の強化・育成とは従業員の仕事の能力を高め、企業の成長・発展に貢献できる人材を育成することです。中長期的な人材育成を通じて戦力として育て、業績向上につなげることが目的です。人材育成と人材教育、この2つは混同されがちです。しかし決定的な違いは、「意図して望ましい成長をさせるかどうか」という点です。人材育成は人を育てることであり、社員を会社が望ましいと考える方向に成長させることを意味します。一方、人材教育は単純に知識やスキルを教えることを指します。人材育成は会社に貢献してくれる人材を育てることですが、育成には多くのリソースを割かなければなりません。人材育成は対象者への指導を行う上司や先輩が必要であり、多忙な業務の合間を縫って人材育成を行わなければなりません。主体性を持って働ける人材を育成するには、育成のゴールを明確な目標として設定し、目標に合わせた教育内容を決める必要もあります。
人材育成は指導を行って終わりではなく、指導後の評価までがワンセットです。その際、定量的な評価を行うことで、指導によってどの程度育成が進んでいるか、どのくらいの効果が見込まれるかまで把握できます。PDCAプロセスのフィードバック検証と実践がそれにあたります。新たな取り組みとして人材の強化・育成行うのではなく人事システムの人事考課に自己目標管理・組織目標管理の仕組みを取り入れて日常的に実践していくほど効果が高いものはありません。会社にとって必要な人材を育成するには、対象者自身が自分で考えて行動し、主体的な行動を起こすことが必須です。自ら設定した目標を適切に評価・修正管理し、必要となる知識・スキルを自己啓発で消化して目標に近づくこと。人手不足の時代に大手企業ならともかく中小企業が人材を育成し、活用・成長するためには工夫が必要です。なるべく実際の課題に向き合い目標を設定して改善していく経験が戦力化します。