組織の未来をつくるコラム

従業員の半数が面談や会議において「本音・本心をほとんど話していない」事実

近年、日常の部下マネジメントのみならず、人材育成からハラスメント対策、健康管理に至るまで、人事労務の様々な場面で「対話」型コミュニケーションの重要性に注目が集まっています。パーソル総合研究所は先日、企業が直面するコミュニケーションの問題を解決し、従業員が互いの本音で話し合える健全な職場環境を構築するための示唆を得ることを目的に、職場内での対話的なコミュニケーションの実態やその影響、本音・本心で話せない要因・話せる要因を定量的に明らかにした「職場の対話に関する定量調査」(全国の男女・正規雇用就業者(20-60歳)N=6,000)の結果を発表しました。職場での会話機会のうち、本音で話せている割合を算出すると、上司との面談で51.2%、チーム内の会議で52.1%が、自分の本音・本心を2割未満しか話していないと回答しています。


過半数以上の従業員が、上司面談・会議において本音・本心をほとんど話していない回答しています。一方で職位によって、職場の「対話」についての認識ギャップが極めて大きいようです。一般社員・従業員はあまり本音を出せていないと感じていますが、事業部長層や役員などの上位役職者は、職場メンバーも自分自身も本音で話せていると感じている傾向が強いようです。特に現場での職位が高い役職者ほどその傾向が強いようです。個人レベルでは、本音で話せる相手は、職場内に「1人もいない」が50.8%で、他の選択肢と比べ圧倒的に高い結果となりました。職場内で本音で話せる相手は「同年代の同僚」が25.6%、本音で話せる性別・年齢は「同年代の同性」が43.6%という結果でした。また、この調査は、従業員が本音を話せなくなる原因となる6つの「リスク意識」を洗い出し、性年代別に特に影響が大きいリスク意識の傾向についても明らかにしています。



本音で話せる程度に、どんな意識が影響しているかを見た時、「裏切り者リスク」「低評価リスク」「無関心リスク」「関係悪化リスク」の意識が高いほど、社内で本音を話していない傾向が見られました。年代別に見ると、「低評価リスク」は30₋40代、「無関心リスク」は40-50代で特に影響していました。20代は「自分の立場では言えないことがある」といった「身分不相応リスク」、50₋60代では自分の意図しない範囲に伝わってしまうかもしれない「拡散リスク」が本音度を下げている傾向が見られました。年代別のリスク意識の高低を見た時、女性の30₋40代は6つのリスク全体的にリスクを感じる傾向が強いようです。特に「身分不相応」リスクの意識が女性は強く、男性30₋40代は「裏切り者」リスクを強く感じている傾向が見られました。


また、複数回の対話セッション後(最大12回)の思考変化、感情変化が見られたことを明らかにしています。思考変化は「あった」「ややあった」合計が88.5%、行動変化は77.9%であったという結果でした。弊事務所では、様々な課題解決の場面で従業員同士のミーティングの場を作っています。ダイアログ(対話)とディスカッションを通じて、思考・感情・行動の変容を目の当たりにしてきました。対話についての定義は、「それぞれが培ってきた経験や解釈、価値観をもとに『違い』を持ち込み、互いの『違い』を顕在化させながら、新しい『意味』『理解』『知識』を一緒につくり出す、双方向なコミュニケーション」としています。それぞれの主張を認め合いながらミーティングを進めると様々な変化が現れます。トップダウンで意思決定するのではなく、現場からの声に耳を傾け意思決定を行う時代です。


調査報告書は、以下よりダウンロードできます。