社員の学び直しに取り組んでいる企業は約7割 「リスキリング手当の支給」などの施策/民間調査
DXが進む中、企業の業務内容も働き方も大きく変化しつつあります。これらの変化に対応していくために新しい仕事に役立つスキルや知識の習得を目的に、学習やトレーニングを行う取り組みをリスキリングと呼ばれます。この「リスキリング」「学び直し」が注目される中、学情が、企業・団体の人事担当者を対象に、スキルアップや学び直しの支援、生産性向上について、企業の取り組み状況を調査しました。同調査に回答があった企業のうち、注目すべきは社員のスキルアップ、学び直しの取り組みについて「実施している」との回答が 69.1%に上ったということです。また、社員のスキルアップ、学び直しのために実施していること(複数回答可)についての回答結果は、「リスキリング手当の支給」(28.4%)が 最多で、次に「書籍の購入補助」(24.2%)「資格取得支援」(14.0%)と続いています。
多くの企業が何等かの取り組みを行っていることがわかりますが、一方で、内閣府の資料(「令和4年度 年次経済財政報告」)によれば、仕事に関連する社会人学習への参加率をOECD加盟国間で比較すると、日本は特に勤務先の費用負担がある学習への参加率が諸外国に比べて低く、OECD平均を下回っていることが指摘されています。日本における学び直しにおける企業側の主要な課題としては「指導する人材や時間の不足」が、労働者側は「時間・費用負担等」が挙げられたということです。また、特に規模の小さい企業ほど職種に特有の実践的スキル向上ニーズが高い一方で、労働者の自己啓発支援を行っていない割合が高く、OJTやOff―JTの実施割合が低いこという調査結果(「令和4年度 年次経済財政報告」)も出ており、社員の能力開発・人材育成への対応不足により、企業の競争力が低下していくことが懸念されます。
中小企業では研修に割けるリソースも限られていますし、ノウハウもないのでリスキングのための研修を内製するのも難しいと思います。また、今の仕事とかけ離れた内容を学ぶとなると何からどう始めたらいいのかも分からない企業も多いと思います。最近では人材育成の研修もDX化が進んでいて、動画を見て、テストを受け、講師からのフィードバックを受けるような一連の研修をオンラインで受講できるサービスも増えています。オンラインでの研修も職務の一環として位置づけ、勤務時間内の受講する仕組みが必要です。大切なことは、時代の変化とともに自分たちも変化しなければならない危機感を持って取り組んでもらうことが大事です。ビジネス環境の大きな変化などの前提知識も学ぶ上での基礎的知識として必要です。
リスキング自体を目的とするのではなく、時代に求められる仕事ができる企業になっていくための手段として取り組む必要があります。以前、このコラムでも取り上げましたが、新しい知識を得る「リスキング」の前に、「アンラーニング(学習棄却)」というプロセスが必要になります。過去の上手くいった経験を捨て、その上でこれから起こるであろう非連続・想定外のシナリオを描いて戦略を立て、その戦略を実現するためのスキルを獲得するのがリスキリングです。意欲ある求職者は、時代の変化に敏感で先んじてDXやリスキリングに積極的に取り組んでいる企業に人は集まります。今回の調査で時代の変化にリスキリングを行わない選択肢がないことを示している結果と受け止めました。
学情の調査結果は、下記よりダウンロードできます。