組織の未来をつくるコラム

民間企業の障がい者実雇用率 最高値更新と雇用のメリットについて

障害者雇用促進法では、事業主に対し、法定雇用率である2.3%(民間企業の場合)以上の障がい者を雇うことを義務付けていますが、厚生労働省は昨年末、実際の雇用状況についてまとめた令和5年の「障害者雇用状況」集計結果を公表しました。これによれば、民間企業の雇用障害者数、実雇用率のいずれもが過去最高を更新しています。具体的には、雇用障害者数は64万2,178.0人となり、対前年比4.6%(2万8,220.0人)の増加、実雇用率は対前年比0.08ポイント上昇の2.33%となりました。また、法定雇用率達成企業の割合は、対前年比1.8ポイント上昇し50.1%となり、2社に1社が法定雇用率を達成しています。法定雇用率が、2024年4月には2.5%となり、40.0人以上の企業が対象となります。不足している企業では、早めに障害者雇用を進めることが重要です。


障がい者雇用とは、身体障害や知的障害をもつ人の状況に配慮した雇用を促進する制度です。障害者雇用促進法によって雇用率や達成できない場合の納付金など様々なルールが定められています。障がい者の雇用において対象となるのは「身体障害者手帳」「療養手帳」「精神障害者保険福祉手帳」の所有者です。背景には、障がいを持つ人たちが長年にわたり直面してきた雇用の困難があります。障がい者は、健常者と比較して雇用の機会が少なく、また、採用されるに至っても低賃金や不安定な雇用状況に置かれるといった問題がどうしてもついて回っていました。それによって障がい者は社会から孤立するようになり、結果的に貧困に陥るケースが多く出てきたわけです。このような状況を改善すべく、障がい者雇用の制度は生まれています。障がい者を含む全員が希望やスキルに応じた仕事において活躍できる社会の構築が目的です。皆一様に社会を担う一員という前提のもと、共生社会を実現しようとする理念が、制度発足の背景にはあります。



障がい者雇用と一般雇用、両者は採用試験を受けてもらう過程こそ同じとはいえ、選考段階で確認しておくことや入社後の扱いは異なります。前者において企業は、障がい者ゆえの特性をヒアリングしたうえで配慮し、通院や休憩など融通を利かすことが必要です。そのほか職場環境の改善やコミュニケーションしやすい場の構築、業務支援等々、あらゆる側面で適切な管理に応じた調整が求められます。障がい者雇用は、障害者雇用促進法に基づき、雇用プランを作成、障がい者を採用するため前もって地域障害者職業センターなどの支援機関に相談するなど計画的な準備が必要です。一緒に働く人たちも障がい者に対してイメージばかりが先行し、正しく理解できないことが多いので事前に研修を実施するなど社内で障がいに関する知識を蓄え、理解を深めておくことも必要です。福祉事業でも障がい者のケアに関するアセスメントばかりではなく、その人の「強み」」生かした就業支援を行うなど、才能ある人たちがその能力を発揮できる企業を求めています。


障がい者であっても、一人の人間として注目すべき能力を持つ人たちに多く出会ってきました。働く場所と仕事があれば企業の戦力としての期待されるであろう人もいます。企業のメリットとして障がい者を雇用することで、企業の多様性が高まります。これにより、様々な視点や経験を持つ従業員が集まり、より創造的かつ革新的な課題に対する解決策が生まれる可能性があります。障がい者を積極的に雇用することで法的雇用率に適合し法的リスクを低減、信頼性を高め、社会的責任を果たす企業として良いイメージを構築することができます。このことは顧客や求職者からの支持を集めやすくなり、結果として人手対策にもなります。障がい者だからこそ持つ困難を乗り越えるための独自の視点や解決策への着想は貴重です。組織全体の生産性や創造性の向上に期待が持てるはずです。


令和5年の「障害者雇用状況」集計結果は、下記よりダウンロードできます。