ジョブ型雇用を推進しても陳腐化しない組織つくり
これからの企業価値は経営戦略と人事戦略とを連動させて、市場環境の構造変化やデジタル化の進展などに対応しながら新たなビジネスモデル、経営戦略を構築できる企業です。変化が激しい現代には「これまでの成功体験に囚われることなく、企業も個人も変化に柔軟に対応し、想定外のショックへの強靭性(レジリエンス)を高めていく変革力が求められます。コロナ禍の影響で、「社歴が長いから」「社内の人に好かれているから」「夜遅くまで会社に残って頑張っているから……」とメンバーシップ型で評価されていた社員の中に、仕事に対してちゃんと成果を出していない人材が存在していることが露呈しました。働き方改革の推進も相まってジョブ型雇用に移行する企業が増えることも不思議なことではありません。
ジョブ型雇用の場合、求職者は自分の得意分野に特化して、能力を十分に発揮できます。また、特定の分野の業務のみを実施することで、専門性やスキルがさらに高まり、仕事の効率や生産性向上にも貢献できるでしょう。企業にとってのジョブ型雇用の最大のメリットは、デジタル分野などにおいて、専門性の高い人材を迅速に採用し、確保できることです。ただし、企業・従業員にとってのデメリットは入社後に、事業の撤退などの何らかの事情で担当職務がなくなった場合や、自らのスキルが企業の要求する水準に達しないと評価された場合には、他部署への異動が難しく、最終的に離職せざるを得ない場合が生じる可能性があります。人の確保を目指すとき即戦力を求めるだけではなく社内教育を充実される必要があります。
転職に関する調査によれば新卒者の3割が3年以内離職者といわれる現代において、従来のメンバーシップ型雇用だけでは働き手の確保は難しいと思われます。しかしジョブ型雇用を推進しても、従来の配置転換があるゼネラリストを目指す社員がいることは企業にとってはメリットがあります。ジョブ型を選択するスペシャリスト指向、専門的テクニカルスキルを獲得しても、今の時代そのスキルは3年で陳腐化すると言われています。テクニカルスキルとは、「プログラミング」や「デザイン」など、特定の職務を遂行するうえで必要なスキルです。このスキルがAIの進歩などの理由で使えないスキルになる可能性があります。スキルに関しては「ポータブルスキル」と「テクニカルスキル」を分割して考えなければなりません。
ポータブルスキルとは「業種や職種が変わっても通用する、持ち出し可能な能力(厚生労働省の定義)」です。具体的には「思考力」「対課題スキル」「対人スキル」などが挙げられます。問題の解決能力や発見能力は、どのような仕事をしていても通用する力なので、ポータブルスキルにほかなりません。テクニカルスキルはポータブルスキルの次に重要なスキルですが、ポータブルスキルという土台を習得していない段階で身につけても、十分な効果は発揮されません。経営戦略と人事戦略を連動させた能力開発の機会、施策の推進は陳腐化するスキルから新たな仕事を生み出し、成長する組織へと変貌します。各部署間の標準化、規格化。共有化された大企業では個々の社員間の仕事力は均衡しますが、中小企業では仕事力の成長は無限大と感じます。