経営課題に生かすシステム思考
弊事務所では、業務改善やDXの取り組みなど、顧問先さまの経営課題の取り組みにシステム思考を提案しています。システム思考とは、複雑化するビジネス環境での課題解決に物事のつながりや原因と結果の相互作用を図に落とし込む思考法で、問題を根本的に解決できるのが特徴です。解決したい問題を取り巻く様々な要素のつながりに着目し、その全体像を「システム」としてとらえ、目の前の問題に対して、対症療法ではなく、マクロ的、全体的な視点で本質的な問題解決を図ることが可能になります。対してロジカルシンキングは、物事を分解して整理したり、因果関係を考えたりする思考法です。物事を分析し、切り分けて考え、点に分解したり、線でつながりを考えたりするのがロジカルシンキングだとすると、点と線を一つの「面」としてとらえ、一枚絵に落とし込んで考えるのがシステム思考といえます。システム思考では、ロジカルシンキングだけでは解決が難しい複雑な問題への深掘りができます。
ステム思考は一枚絵を描いて問題解決へのアプローチを探っていきます。そのために、さまざまな要素のつながりを見える化するためのツールを使います。ツールを活用することで、システム思考に関するさまざまな側面への理解につながっていきます。「時系列パターングラフ」は、課題のパターンを見える化し、大局の流れをつかみます。「ループ図」は、今起きているパターン説明し、大局をつくる構造を見える化します。「レバレッジ・ポイント」は日本語に訳すと「てこの力点」です。小さな力で大きな変化をもたらす効果的な介入点を探し、問題構造の根本、ツボを探求します。また、「氷山モデル」は、システム思考で使われるツールの一つです。「氷山の一角」という言葉にもあるように、見えていることは、全体のほんの一部分です。氷山モデルでは、システムの全体像を、「出来事」「パターン」「構造」「メンタルモデル」の4階層に見立ててとらえ、物事の全体像を見ていきます。
最終的に「メンタルモデル」に働きかけることで、問題解決だけでなく、人・組織の意識・無意識の変革を促し、結果的に自律的な学習や「学習する組織」への変化、議論や意思決定のレベル向上につながることも期待できます。複雑で変化の激しい時代には、多様な関係者が真の対話を重ね複雑な現実を直視し未来のビジョンを共有することで、自ら創造し再生し続ける組織に変わることが必要です。「学習する組織」はまさに21世紀に求められる組織像であり、業務の効率的改善や標準化が常套手段であった過去の安定成長時代とは違い、複雑の激しく変化する時代には、しなやかさや多様性を強化することで長期的な効率の最適化を図ることができます。安定成長時代のメンタルモデルの思考や行動の前提を見直し、これからの環境や経営状況にあった組織とするためには多面的な視点と多様性を創造につなげる対話が欠かせません。
システム思考の基礎となるピーター・センゲ著書「学習する組織」は、1990年初版以来、多くの経営者・コンサルタントの実践的教材として活用されてきました。他責思考や縦割り意識、当事者意識の欠如などの学習障害は、日本の企業・行政などの多くの日本の組織に見られることが指摘されています。システム思考では自発的な課題解決への取り組み意識が芽生えます。人事システム運用に関して従業員の能力開発・組織開発の取り組みで、当初は良く分からずに自社変革のプロジェクトへ参加していた人たちが、自らの意思でチームとして協力しあい問題解決をする姿を幾度も見てきました。基礎的なワークショップから課題の実践的な取り組みで従業員の課題解決能力が高まり、コンサルタントを介せずとも様々なプロジェクト運営ができることが理想です。