組織の未来をつくるコラム

特定職種の人材確保には賃金制度の変更は必要

近年、DX系人材や建設業の施工管理技士など、需給バランスの崩れから、労働市場での年収水準が高騰し、自社の賃金制度では処遇が難しいという状況がしばしば発生しています。そこで今回、リクルートの「企業の人材マネジメントに関する調査2023「人材の評価」「賃金・報酬」「昇進・昇格」制度編」から、外部労働市場の水準に応じて人事システムの賃金制度及び各制度がどうあるべきかを考えてみたいと思います。「外部労働市場の水準に応じて、特定の人材については報酬制度を変更しているか」という設問への回答では、特定の人材については報酬制度を変更している企業は33.1%となっています。今後、労働市場における環境変化として人の流動性が高まっていくことが予測されます。特定の人材は特にこれまで以上に外部労働市場を意識した制度設計が求められるようです。調査では、人事システムの各制度の変更と人事採用の関係も明らかになりました。


「人材の評価」「賃金・報酬」「昇進・昇格」の3つの制度いわゆる人事システムの全てを見直している企業は、人事採用ができており、かつ従業員エンゲージメントが高いことが明らかになりました。各制度の見直しが必要と感じている理由の多くは、一般論的理由を挙げていますが高位で将来を見据えた理由とされるものを挙げてみたいと思います。評価制度の見直しの必要性に関する項目では「従業員の行動変容やスキル開発を促すため」(42.8%:3位)。賃金・報酬制度見直しの必要性に関する項目では「業界や外部市場と照らして、競争力のある報酬水準にするため」(40.9%:2位)。昇進・昇格制度の見直しの必要性に関する項目では「従業員の多様な働き方やキャリアパスを実現するため」(46.2%:3位)。このような項目を意識して制度設計をする重要性が増してきていると同時に人材採用にもその差が歴然と現れています。



賃金や報酬制度の関する取り組みでは。「賃金について従業員の満足度や納得度を確認している」「業界や外部労働市場の賃金・報酬制度をモニタリングしている」「社内外の状況に応じて、定期的に賃金報酬制度の見直しを行っている」など地道な調査・検討を重ね制度変更に向けた活動を行っているように見受けられます。このような取り組みを行っている企業と行っていない企業の採用状況は、「人員数」「人材数」約6割と約3割、ダブルポイントの差をつけられています。各制度の見直し状況と採用状況の関係では、「人材の評価」「賃金・報酬」「昇進・昇格」の3つの制度をすべて見直している企業では、「人員数採用状況」では69.0%の達成率、「人材レベル採用状況」では59.5%の達成率となっています。制度全体がシステムとして動いている以上、すべてを見直す選択しかないと思います。


「評価」「賃金」「昇格」の各制度は、それらが一貫性のあるシステムとして相互作用的に動くことで、経営のメッセージになります。従業員のどのような行動を評価していて、どのようなパフォーマンスや成果に対して賃金や報酬を支払い、どのような人を昇進させているのかを制度を通じて従業員に示しているとも言えます。各制度を別なものと捉えてしまうと、経営側の意図がくみにくくなりエンゲージメント等が低くなると考えられます。
一貫性のある人事システムを示すことで、従業員が成果を出すためのモチベーションや企業へのエンゲージメントの向上にもつながります。特定職種の人材採用では、キャリパスには馴染まない高度な業務もありますので個別労働契約にせざるを得ない時もあります。