組織の未来をつくるコラム

なし崩しにずり落ちる目標

目標管理と聞くと企業の評価制度であるとか、形だけでやっている感がある制度と捉えることが多いようですが、仕事での目標がないということは自己成長のために具体的に何を実行するかが決まっていないということになりませんか。今の時代は、リスキリング・リカレント、会社で学びの場を提供するか自己学習によってスキルの向上や新しい技術の習得を目指すかの違いがあっても目標を定めて、そこを目指すことは大事です。目標を定めても、今の仕事が忙しく学習する時間がとれない、背に腹を代えられず現実を高めることではなく。目標を下げる選択に屈することが多いようです。このような調整が必要な場面もありますが、継続的に調整を繰り返すと「目標のなしくずし」という現象に陥ってしまいます。


「目標のなしくずし」は、何故おきるのでしょうか。掲げる目標が高すぎると考えるというのが一般的ですが、果たしてそれだけでしょうか。人出不足や新たなデジタル機器の投入など現状対応で手いっぱいでも、学習の時間を取ろう、自分を高める努力がとられてしかるべきと思います。個人の理想像・未来像いわゆるビジョンは、その人の内側から生まれるものです。究極的には、一企業の理念に従う目標管理を行うことだけはなく、なぜ自分は生きているのかとの問いに答えるための理想像であり未来像でもあると思います。人に語ることではなく、自分自身が持ち続ける目的です。そのうえでどのようにそれを表現するのかは、仕事を通じて行うことが一番、そのためにも成長は必要です。



目標と現実との乖離(ギャップ)が、非現実的なものとして受け止められたり、夢物語であるように思えたりして、失望や絶望的な気分になったりするかもしれません。しかし、ビジョンや目標と現実の乖離がエネルギー源でもあり、乖離がなければビジョンに向かって進む行動も起こす必要がないのです。乖離を埋めようとする努力や学習が真の創造的エネルギーの源で、「創造的緊張」と呼ばれます。それとは反対の緊張からの解放の方法が、ビジョンを現実に近づける・目標を引き下げる「感情的緊張」と呼ばれるものです。目標がなし崩しにずり落ちる状況が生まれます。とは言え、「創造的緊張」が、悲しみ、落胆、絶望など不安にまつわる気持ちや感情をもたらすことは良くあります。しかし、創造的なプロセスはそのような感情を伴うもので「感情的緊張」とは別物です。

感情的緊張に耐えられない時に、目標のなし崩しが起こってしまいます。創造的緊張に伴う不安にまつわる気持ちやマイナスの感情は、一瞬同じように思えるかもしれませんが、創造的緊張ではないと理解することが重要です。創造的緊張を理解し、目標を引き下げずに創造的緊張を作用させれば、ビジョン・目標は活性力になります。失敗に対する見方も、失敗とは単なる不足、ビジョン・目標と今の現実の乖離があることを示すに過ぎない。失敗は学びのチャンスと思えるようになります。ポラロイドカメラの発明者エドゥウィン・ランドの言葉「失敗とは、その最大限のメリットがまだ強みに転じていない出来事のことである」