新入社員意識調査から読み取る今後の人財育成
日本能率協会から今年も「新入社員意識調査」の結果が公表されました。(「お知らせ」10/10資料公開)この調査は、同会が実施する新入社員向け公開教育セミナーの参加者を対象に実施されているもので、今回の結果は675人からの回答を集計したものです。今年も様々な項目について調査が行われていますが、今回の調査で、入社当初から約3割が転職・独立を考えていることが分かりました。また、仕事をしていく上での抵抗感の第2位が「知らない人・取引先に電話をかける」(66.4%)、第1位が「上司や先輩からの指示が曖昧でも質問しないで、とりあえず作業を進める」(83.7%)という結果でした。人手不足等により上司・先輩が忙しそうにしていれば、質問し難いなかも知れません。
今、現実の職場を見てみると、環境変化が大きく、場合によっては上司も答えを持っていないこともある状況の中で、新入社員であっても考えながら前に進むことが多くなっていると思います。少なくとも新入社員はそれに強い苦手意識を持っているということが分かります。理想的だと思う上司・先輩について尋ねたところ第1位は「仕事について丁寧な指導をする上司・先輩」(79.0%)となりました。仕事をする上での不安を尋ねたところ、「仕事に対する現在の自分の能力・スキル」(65.6%)「仕事での失敗やミス」(50.7%)という結果で、上司・先輩からの指示が曖昧でも仕事を進めながらも、能力・スキルに自信がなく仕事での失敗やミスを恐れている現実が浮かび上がりました。新入社員受け入れの段階では、こうした意識を持っていることを理解し、まずは具体的で明確な指示を出すことを意識し、徐々に自分で考える癖付けやトレーニングを行っていくことが重要になると思われます。
入社当初から約3割が転職・独立を考えている新入社員ですが、これから仕事をしていく上で、強化したいと思う点(能力・スキル・資質)を尋ねたところ、第1位が「学習能力(他者や経験から学ぶ力)」(62.8%)、「自分の意見をわかりやすく伝える力(52.7%)、「物事を進んで取り組む力」(49.2%)という順位になりました。その他の注目すべき回答は、「現状を分析し目的や課題を明らかにする力」(35.7%)、「課題解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力」(27.4%)が上位につけ、問題解決能力を強化できる職場が望まれるようです。転職を考えるシチュエーションを尋ねたところ「会社の将来性が見込めなくなったとき」(78.4%)、次に「社風・企業文化が自分に合わないと感じたとき」(72.4%)が上位1,2位です。「職場でキャリアアップ・自己成長に限界を感じたとき」(48.4%)も興味深いところです。
新入社員に限らず転職者も、今後ますます自己のキャリアアップに興味を持たれると思います。企業も長期雇用の従業員と3年から5年で退職する従業員を想定した、キャリアパスや人財育成のシステムを作っていくことが重要になります。優秀な人財を選び・選ばれる企業とは、実践的な課題解決のプログラムを持ち、自らの企業も業務改善・DX推進に取り組みを行っている組織であることです。新規事業の創出にも積極的で、新しく入った従業員にもスタートアップ要員として参加、学ぶ機会があれば個人も組織も強くなっていきます。日本能率協会の過去3年間の調査結果は、回答に多少の変動はありますが、将来の人材育成計画の参考になります。人財の確保・育成は、最大の経営課題です。