中小企業のデザイン経営
海外の企業は、自社製品の魅力や技術力をデザイン力で伝えることで成功を収めています。日本企業にとってもデザインの考え方を取り入れた経営による競争力獲得が課題です。そこで経産省と特許庁は、日本企業のデザイン力の競争力強化に向けた課題の整理と対策の検討を行い、報告書である「デザイン経営」宣言を取りまとめました。この宣言は、デザイン経営の意義や中小企業がデザインを経営資源とするための具体的取り組みを示したものです。デザイン経営が生み出すものは、「ブランド力の向上」と「イノベーション力の向上」の二つとしています。
デザイン経営が実現する「ブランド力の向上」とは、企業が提供する製品やサービスの見た目を魅力的にして、顧客の印象を良くすることもデザインのひとつです。顧客が企業と接点を持つあらゆるシーン(購買行動やサービス提供の機会だけではなく・・)において、企業が大切にしている価値や、それを表現しようとする意思を徹底させることもデザインの役割です。デザインは、企業のイノベーションを実現する力もあります。デザインには、人間中心的視点から得た発想の企業の価値を結び付けて、世の中に役立つものを生む「イノベーション」の力があります。
デザイン経営の考え方の本流は、1987年に刊行された「デザインの思考過程」にあります。デザイナーは、「顧客の目にどう映るか」を重視して、顧客にとってのわかりやすさや使いやすさなどを考えながらアイディアを具体化していきます。こうした方法論を課題解決のフレームワークとして落とし込んだのが、デザイン思考という概念です。「デザイン経営」宣言では、デザイン経営と呼ぶための必要条件として、①経営チームにデザイン責任者がいること、②事業戦略構築の最上流からデザイン起点であること、この2点を挙げています。何よりも企業のさまざまな課題に対して、人間中心の考え方を軸とするデザイナーの思考様式で取り組むことがデザイン経営です。
人口や労働力減少により国内の市場規模は限界を迎えています。商品やサービスの質に加えて顧客体験の質やブランドの価値がビジネスの成功に影響を与えています。中小企業の取り組みとして新たな経営手法としての価値があると思います。具体的な取り組みとしては、デザイン責任者の経営チームへの責任者の参画、製品・サービス開発のスタートからデザイナーが参画、デザイン経営を推進する組織体制、デザイン人材の採用強化、企業カルチャーの醸成、新しい商品・サービスを作ってみる、などがあります。デザイン力とは、製品をきれいに形作ることだけではなく、人間を起点とした考え方で市場ニーズを適切に捉えて、必要な製品・体験を考察する能力のことをいいます。
このページから、特許庁発刊の中小企業のデザイン経営ハンドブック「みんなのデザイン経営」がダウンロードできますので参考にしてください。