組織の未来をつくるコラム

目標管理制度と論理的思考力

一般的に目標管理制度は、年度の初めに企業の経営計画の年間目標に沿って従業員に目標を設定してもらい、その進捗や達成度に応じて人事評価を行う業績評価として意味合いとして使うことが多いようです。確かに人事システムの人事考課の制度として行うこともありますが、従業員の能力開発のツールとして行うという考え方もあります。日本は将来的には欧米型の職務型人事制度へ向かうと思いますが、今までの指揮命令、メンバーシップ型の働き方からの考え方の変更には時間がかかります。予算や目標は与えられるものとしていた考え方から、企業の年度計画や組織目標に貢献できる自己の目標を立て、自らがマネジメントする考え方への転換が必要です。


国際情勢の変化やAI、ICTなど新技術の進歩、私達を取り巻く環境は日々スピーディに変化しています。日々の仕事に必要不可欠なスキルである「論理的思考」の重要性が増し、仮説検証を繰り返し新たな道筋を見出す力がビジネスパーソンに求められています。目標管理制度は、自ら立てた目標に対して仕事を通じて自らマネジメントできるようになることが最大の利点です。しかし、多くの労働者にその能力があるでしょうか?私は、その能力は学び・育てることでしか手にいれることはできないと思っています。それを可能とするのが、自己統制による目標管理であり、論理的思考力を強化する取り組みです。



目標管理制度では、年初に企業目標や部門目標などから、自らが貢献できる自己目標を設定します。その目標を達成するための施策(仮説)を5つほど設定します。その年度の最終目標(KGI)に対して、月間の通過地点おける業績評価指標(KPI)を設定して、それに向かう日々の行動、週の行動を決定していきます。この自己目標の設定時に「ロジックツリー」が完成し、論理的思考力が身につきます。そのためには、多くの従業員が目標設定に苦慮する場面で、それを支援する上司の「傾聴・承認・質問」のコーチング・スキルは必要不可欠です。実践に沿った論理的思考の学びの場が、目標管理制度と考えることもできます。


目標管理制度の多くの失敗が、設定期間の間で上司による2回程度のフィードバックを行わないことです。業績評価指標(KPI)に基づいて数量的な分析評価をし、部下の実践行動から気づき得たものを聞き、認め、今後の計画修正を行うかの話し合いが大事なのです。部下の行動、結果の自己評価と修正に関しては上司としての意見は極力抑えて、本人の自主性に任せるのが良いと思います。ここでも中間面接時のコーチング・スキルが必要です。職業上の専門的スキル・学びとは違い、目標管理制度での学びは論理的思考力の強化、問題解決能力の強化であり、何よりも素晴らしいのはPDCAの業務改善プロセスを体得できることです。これを人事システムに活用しない選択肢はないと思います。