組織の未来をつくるコラム

目的を明らかにして進める正しい目標管理制度

日本ではほとんどの大企業において、組織運営に目標管理制度が用いられていますが、近年は中小企業においても導入する動きが活発です。期初に個人目標を設定して期末にその達成度に基づいて人事評価を行う制度として、そのほとんどが業績評価です。この目標管理制度が組織運営に関して貢献しているかというと甚だ疑問で、むしろ企業の更なる成長とイノベーションの足かせとなっているのが実態ではないでしょうか?多くの企業で、目標管理制度の問題点が認識されつつありますが、運用についての根本的な解決に至らないのが現状のようです。


そもそも目標管理制度の提唱者であるP.Fドラッカーは、目標管理制度をどのように紹介していたのでしょうか?マネジメント第34章「自己目標管理」では、「あらゆる仕事が組織全体の目標に向けられなければ、成果は得られない」として個人の目標と組織の目標を生産的な仕事(成果)とするために個人として何をすべきかを実行していくプロセスとしています。それを阻害する要因として「仕事の専門化」が組織を分断し、「上司の間違った方向づけ」「階層の違い」が、それぞれのポジションでの考え方を押し付ける結果になります。4つ目の阻害要因は「報酬による方向づけ」です。日本の目標管理制度は部下の自主性を認めない制度となっているのではないでしょうか?



自己目標管理とは、自分の仕事を自らマネジメントできるようになることが最大の利点です。自己管理が強い動機付けとなり仕事に対する責任感を高めます。責任のある仕事という重荷を背負ってもらうには、仕事に「やりがい」「働きがい」を持ってもらわなければなりません。マネジメント第21章「仕事への責任」では、第1に仕事の分析・プロセス化、いわゆる課業管理であり職務階層による要件定義(職務等級制度)です。第2に「フィードバック情報」自らの成果に関する上司からのフィードバックです。第3に「継続学習」これは仕事のスキルのトレーニングではなく、今風でいえば「リスキリング」のことです。


この章では、「働く者の参画」「明確な権限」「職務責任」と自らのマネジメントから組織のマネジメントと進みます。仕事への「やりがい」を持つためには「フィードバック情報」が必要です。これが目標管理制度のフィードバック分析であり、PDCAの職務プロセスの体得です。個人の努力を評価することには異議を唱えるものではありませんが、正しい目標管理は個人の成長と自らの強みを見つけ出すツールとして活用すべきだと思います。