不確実(VUCA)な時代を生き抜く企業に必要な人事システム
VUCA(ブーカ)とは、変動性、不確実性、複雑性、曖昧性の英語の頭文字を取った造語で、さまざまなものを取り巻く環境が変化し、将来の予測が難しくなっている状況を示しています。4つの言葉の持つ意味について見ていきます。「変動性」は、現代においてテクノロジーの進化や、それに伴って様々の価値観や社会の仕組み、顧客ニーズなどが変化していくことを指します。「不可実性」は、自然環境や政治・国家、制度などの不可実性を示しています。唐突に訪れる問題を予測することは不可能です。「複雑性」は、経済がグローバル化したことで、ビジネスは複雑化しています。それぞれの国の法律、文化、常識などが絡み合い、より複雑化しています。最後に「曖昧性」、変動性、不可実性、複雑性が組み合わさることで、因果関係が不明で、前例のない出来事が増えていきます。
激しい変化が起こり、これまでの常識が覆されるとするVUCAの時代。ビジネスでは、この時代をどのように生き抜くべきでしょうか。社会または組織において顕在化していない本質的な課題を見つけて、問題の解決策をいち早く提案して、実行できる能力が必要です。変化の多いVUCAの時代においては、本質的な課題もこれまでの事例とは異なる場合があります。そのため、成功事例のパターンにとらわれずに、ものごとの本質を見抜く力も同時に必要とされます。また、従業員は組織にとらわれず、自分で生きていく覚悟と能力が必要とされています。仕事の範囲を明確することで専門性を高める雇用方法である「ジョブ型雇用」にシフトする会社が増えています。その上で、身分と給与が企業によって保証されるとは言い切れないため、組織(会社)に属していても、他からも求められる人材になるためのスキルを従業員に身につけてもらう人材育成のシステム構築が急務です。選び・選ばれる企業となる為にも他にない教育システムは有効です。
VUCAの時代は、想定外の事象が起こることが多々あると考えられます。そのため、想定外のことであっても柔軟に対応でき、迅速に行動に移せる人財が必要です。企業ビジョンを明確にした上で、想定外を想定する意識と組織の適合性の向上、意識の共有化と権限委譲、人事システムにおいても階層別の職責記述が必要になります。組織だけではなく個人としても適応能力を高め、周囲の適応能力も高められるリーダーシップが必要とされます。日本企業はこれまで、意思決定や決断に時間がかかっていました。そして業務や成果を組織として全うするため、責任の所在が曖昧な部分があったのです。これからはシステムとして組織・個人での責任を明確にして、迅速に決断して行動することが重要です。
これからの中小企業では、人財育成が急務です。VUCAの時代は、ビジネスに必要な論理的思考力を身につけるための社内教育と連携した人事システムが必要です。論理的思考力とは、物事を全体的に捉えて要素ごとに分解し、論理の矛盾や飛躍がないように要素を組み合わせたり、筋道立てて整理したりする考え方のことです。「論理(的)」とは議論・思考・推論を進める法則や形式を意味します。つまり論理的思考とは、物事の要素を体系的に整理したり、法則に沿って行われる筋道立った思考です。弊事務所では、統一モデリング言語(UML)による論理的思考力の強化を提案しています。課題を「見える化」することで本質的原因にたどり着く実践的教育を行っています。その他、MECE(ミーシー)をロジカルシンキングに活用し、物事を体系的に整理する3C分析・4P分析・SWOT分析などのフレームワークを活用する方法もあります。