組織の未来をつくるコラム

実践的社員教育のすすめ

経済財政運営と改革の基本方針2023では、リスキリングによる能力向上の支援など三位一体の労働市場改革を実行し、構造的賃上げの実現を通じた賃金と物価の好循環へとつなげるとしています。将来の人材確保のためにも社員教育は必要不可欠のものとなります。リスキリングとは、デジタル時代・DX(デジタルトランスフォーメーション)時代に必要な知識・スキルを学び直すことであり、リカレント教育のなかで最も注目されている分野の一つに位置づけられる言葉です。一方、リカレント教育とは、「学校→就職→学校→転職……」というように、学びと仕事の間を循環(リカレント・recurrent)しながらの学びのことです。仕事を休職もしくは退職して学び直すものが元来の定義ですが、日本のリカレント教育には仕事を休まず学び直すものも含まれ、社会人の学び直しとも呼ばれています。しかし、ある民間調査によれば、大企業の社内教育担当者に研修の効果測定結果を尋ねたところ企業の3割以上、社内研修の効果測定が「不十分」と回答 成果との明確なつながりを見出せずと答えています。



社員教育とは、企業が社員に対してビジネスに役立つ知識やスキルを学ぶための機会を提供することをいいます。社員教育というと研修がイメージされがちですが、実は多種多様な方法があります。現在の社員教育では企業が一方的に学習内容を押し付けるのではなく、従業員が自発的に学べるような機会や環境の提供が重視されています。現状を分析し、課題と目標の設定が必要です。現状の理解によって自社の社員に必要なスキルの洗い出しが可能となり、社員教育の目的を明確にできます。現状把握の際にはひとつの側面を見るのではなく、多角的に検討することがおすすめです。人的資本経営では、経営戦略と人事制度の紐づけが言われていますが、社員教育も人事システムの一環としての制度です。DXも業務改善・新規事業構築も社員教育として、現状分析・課題抽出・目標設定・施策立案の目標管理システムまたはビジネスモデリングの実践的社員教育として行う実利と教育を一体とする考え方もあります。企業の現在・将来の課題解決を実践する社員教育の制度は、人材育成だけではなく、将来求められる能力取得を実践している企業であれば、自己成長意識の高い従業員採用にも繋がります。