組織の未来をつくるコラム

実質賃金、12カ月連続減。物価上昇に追い付かず

厚生労働省は5月9日、令和5年3月の「毎月勤労統計調査」結果(速報、事業所規模5人以上)を公表しました。現金給与総額は、就業形態計で前年同月比0.8%増の29万1,081円、うち一般労働者が同1.3%増の38万82円、パートタイム労働者が同2.1%増の10万1,038円。現金給与総額指数を消費者物価指数で割った実質賃金では前年同月比2.9%減となりました。実質賃金の減少は12か月連続となり、現金給与総額(名目賃金)は増加しましたが、物価高に追い付かない状況が続きました。政府は、2月に開かれた「新しい資本主義実現会議」で、自己都合で退職した場合、失業保険の給付(受け取り)まで2か月近く要する仕組みを見直すことを明らかにしていました。毎月勤労統計調査の結果も踏まえて政府の方針が決まり始めました。



政府は、15日午前に開いた経済財政諮問会議で、金融政策・物価等に関する集中審議を行い、政府側はデフレ脱却には物価や賃金の上昇が持続的・安定的なものとなるか関連指標をきめ細かくみることが必要との論点を示しました。岸田文雄首相は、先行きの不確実性が高まる中で政府と日銀との連携が重要だとし、政府としては構造的な賃上げを最重要課題として取り組んでいく考えを示しました。また、この会議において自己都合による失業給付を、会社都合による理由同様の制度として、転職の障害となっている現在の仕組みを改めることで、労働者の転職によるリスキリングと賃金上昇を後押しするようです。企業は、物価高を上回る昇給とリスキリングを含めた職場環境の整備が必要になるようです。